表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/71

帝国の薔薇 2




 ラティーシャはイライラしながら、侍女を呼んだ。

 たちまち侍女達がラティーシャを取り囲む。

「ラティーシャ様の新しいドレスといったら、この国最高の品でないといけませんのに、何を考えているのでしょう……」

一人が代わりのお茶を差し出しながらそう言った。


「まったくです。帝国の薔薇と呼ばれるラティーシャ様にはもっともっと輝くような生地でないといけません」

「そういえば、ラティーシャ様、今日のイヤリング、なんて素敵なんでしょう」

「ほんとに、ラティーシャ様にぴったり」


 ラティーシャは耳元で揺れるダイヤモンドのイアリングに触れた。大きさも輝きも見事な一粒ダイヤの周りを、小さなブルーダイヤが囲んでいる。


 これは、昨日ネイハムにもらったものだった。

 ネイハムとは、婚約の約束をしてある。もうすぐ公になるだろう。そのためにも最高のドレスを作りたいのに。


 しかし、さっきまでのイラついた気持ちは、そのイヤリングに触れていると少し収まってきた。


 今、ここジグラード帝国で、ラティーシャよりも美しい令嬢はいない。


「鏡」


 一言そう言うと、侍女の一人がすぐに手鏡を差し出した。

 鏡の中のラティーシャは、美しい金色の髪にピンクのリボンを編み込み、先を長く垂らしてある。ピンクのリボンは、ラティーシャの髪と金色の瞳によく映えるので最近のお気に入りだ。


 美しい顎の線。そこから続く華奢な首。

 大きな金茶の瞳。

 真っ白い肌に薄いピンクの小さい唇。

 ラティーシャは鏡の中の自分に微笑んだ。


 昔、どこか遠くの国で、あまりに美しい姫を手に入れるため、王子二人が国を二分して争い、とうとう国が滅んでしまったという物語があるが、自分はまさにその姫のようなものだと思う。


 だってネイハムは、この私を手に入れるためにあんなことまでしでかしたのだから……。


 そう。ネイハムは冗談めかしてはいるものの、何度もラティーシャに求婚してきた。


 ネイハム・エト・ランフォード。


 父親はグラディウス皇帝の実弟であるランフォード大公。ネイハムはランフォード家の嫡男であり、ランドルの従兄弟だ。


 しかしラティーシャはすでにランドル皇子と婚約していた。

 顔だけは美しいが、ラティーシャにほとんど関心を示さないランドル皇子。

 ほんのいたずら心で、

「私は皇太子にしか興味がないのです」

 と言ったところ

「私が皇太子なら受け入れてくれるのですか?」

 とネイハムの目が光った。


「ふふ……」

 ラティーシャは小さく笑った。確かに、もしランドルに何かあれば、次の皇太子はネイハム、かもしれない。

 それでもまさか、本当にあんなことをしでかすとは思っていなかった。


※ 誤字報告をくださった方、ありがとうございました。感謝致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ