第12話 「作戦会議!」
パパとママは、無邪気に喜んでいるチュッチュを見ているうちに、ようやく少し緊張がほぐれて来て、他の動物たちとも話がしてみたくなりました。
そこで、ママが真琴に聞きました。
「ねぇ、私から、動物に話しかけても、いいのかな?」
ラクたんを手伝って、たき火に枝をくべていた真琴は、「うん!ルールとかはないよ!」と、先輩らしい余裕で教えてあげました。
ママは、「そう。それじゃあ、うさぎさんと、ラクたん。」
と、話しかけたのですが、紗矢が、「うさぎさんはうさたんっていうんだよ。」と教えたので、あらためて、「うさたん、ラクたん。話を聞いていると、この集まりを主催しているのは、二人のようだから、お礼を言わせてね。紗矢と真琴を、こんな素敵な集まりの仲間に入れてくれて、ありがとう!」
「どういたしまして。」ラクたんがにっこり笑ってぺこりとお辞儀をしました。
「主催ってほどでもないが、まあ山上の栗パーティーを心ゆくまで楽しんでくれよ。」うさたんの方は、まだ大人の人間には警戒心があるようで、ぼそぼそと答えました。
ママは、今度は猫たちの方を見て、「ゆいたん、るきあちゃん、どうして、こんな楽しい集まりを、ママやパパに教えてくれなかったの?あ、もしかして、もともとは、子どもたちだけ参加できる、っていう集いだったのかな。」と聞きました。
るきあは、普段の甘えん坊とは違う、きょどきょどした様子で、「だって、だって……。」と言いよどんでから、残念そうにうつむきました。
そこで、ゆいたんが答えました。
「秘密にしておかないといけない事情があったの。話したかったけど、話さないでって、頼まれていたんだもの。」
ゆいたんから、「ね、るきあちゃん。」とうながされて、るきあは「うん……。」とうなずきながら、ちらっと真琴のリュックの方を見ました。
パパがそれに気が付いて、そっと手を上げて、「僕も、話をさせてもらって良いかな?」と聞きました。
動物たちが、口々に、「いいよ。」と答えたので、パパはみんなに言うように、話し始めました。
「たぶん、『話さないで。』って頼んだ人は、この事を言いふらされたり、みんなが厄介ごとに巻き込まれるのを、心配しているんだと思う。僕は新聞記者だから、なおさら、世間にこの事を知らせてしまうんじゃないかって、用心したのもあるんだろうね。でも、僕は絶対に、今日のこの体験を、よその誰かに話したりはしないよ。だって、こんなに素敵な、子供の頃から憧れていた、ファンタジーが現実になるっていう体験を、無粋な行動で、台無しになんか、したくないから。仕事と夢、どちらを取る?ってなったら、僕は夢の方を取る。」
「かっこいい~。」ママも拍手して、「みんなが話してほしくないなら、私も黙ってるよ。自慢したくてたまらないけど、我慢する!」と言いました。
動物たちも、「やった!」と、肩をたたき合って喜びました。
紗矢は真琴と顔を見合わせて、少し笑顔になったものの、
「でも、まだ、二人には、秘密にしている事があるの。本当は、そっちの方が、話してほしくないメインの秘密なの。」
と、言いました。
「コロポックルの事だろう?」
パパがこともなげに聞いたので、紗矢はびっくりして、「どうして知ってるの?」と聞き返しました。
「ふっふっふ、パパの推理力を、あなどっちゃいけない。ママから寄せられた『人間みたいな脚の小さな生き物を見た。』という目撃情報や、お隣のオリバー少年の『小人を見た。』という証言、紗矢が僕にした『コロポックルをもし見つけたらどうする?』という質問、そして、紗矢と真琴と動物たちが突然シュガー・マウンテンを目指して出かけた事、全てをつなぎ合わせて考えると、コロポックルが実在していて、紗矢や真琴がかくまって力を貸しているんじゃないか、という推測が成り立つ。だろう?」
「うわ~。パパ名探偵!」真琴が思わず感心しました。
「え?うそうそうそ、ほんとに、いるの?コロポックル。」ママが動物たちの間をきょろきょろ見回します。
「紗矢、さっき言った通り、パパとママは秘密を絶対に守るし、みんなの味方だよ。そう伝えて。」
パパが、真琴のリュックをちらっと見てから、言いました。
紗矢は、パパの観察力に感心すると同時に、とうとう降参して、「バレちゃってるよ。もう出て来ていいよ。」と、声をかけました。
リュックの口が、ゆっくり開いて、中から、白い衣を着た小さな人間のような生き物が三人、もそもそとはい出して来ました。
男の子が一人と、女の子が二人で、それぞれ、むいた栗を両手に持って、食べる途中だったらしく、どの子もほっぺたをふくらませて、気まずそうにもぐもぐしていました。
紗矢が言いました。
「コロポックルじゃなくて、天使だよ。魔法か何かで、小さくなっちゃってるの。ほら、背中に、羽が生えているでしょう?」
「かっわいいーー!!」可愛いものに目がないママが、しゃがみ込んで、間近でお人形のような天使たちを観察しはじめました。
パパが、その隣にしゃがむと、「はじめまして。僕らも、君たちを守るために、協力するよ。それと、君たちを見た事は秘密にするっていう約束は、必ず守る。だから、安心して。」と、優しく伝えました。
天使たちは、頭を寄せ合って、小声で相談をしていましたが、やがて、パパに向き直って、それぞれ、「ありがとう!」「じゃあ仲間ね!」「これからよろしくね!」と言いながら、手を差し出しました。
パパは人差し指を近づけて、三人の天使たちに握らせて、握手を交わしました。
ママも、「私も、仲間に入れて~!」と、人差し指を差し出したので、、天使たちは「もちろん!いいよ!」と言いながら、指を囲んで、握手しました。
さあ、これで、パパとママも、晴れてこの素敵な仲間たちの一員です!
るきあは、ずっと我慢していた喜びを、とうとう爆発させて、「ママー!パパー!」と言いながら、ママのひざに飛び乗ると、ひっくり返ってゴロゴロ喉を鳴らしながら甘えました。
「あらあらっ、やっといつものるきあちゃんに戻った!言葉がしゃべれるようになって、性格もクールになっちゃったのかと、心配したよ~。」ママが、お腹をコチョコチョなでてやりながら、優しく言いました。
「だって、甘えたら、天使ちゃんたちの事まで話しちゃいそうだったんだもんっ。話したくて話したくて、たまらなかったんだもん!」
ゆいたんも、パパに歩み寄って、ひざに頬をすりすりしながら、「来てくれて嬉しい!パパとママも天使ちゃんたちを見て良い事になったし、これから、みんなで一緒に、楽しくいろんなお話をしようね!」と言いました。
「うん。ゆいたんや他のみんなの事、天使たちの事、まだまだ教えてほしい事がいっぱいあるよ!」パパがこう返事をして、ふと足元を見ると、メイが花さんの手を引いて近づいて来て、「僕たちの話も、聴いてくれる?」と聞きました。
ハムスターたちが遠慮がちなのは、ふだん主に紗矢と真琴がお世話をしてくれるので、パパとは特に、これまであまり遊んだりする機会がなかったからです。
「もちろん、喜んで。何か伝えたい事があるかい?」パパからあらためて聞かれて、メイは、なにも思いつかない事に気が付いて、「何かある?」と、花さんに聞きました。
花さんは恥ずかしがりながら、「天使ちゃんたちを一緒に守ってくれて、ありがとう……。」と小声で答えました。そこでメイは、パパを見上げて、「天使ちゃんたちを一緒に守ってくれて、ありがとうって言ってる!僕もおんなじ気持ち!」と伝えました。
パパは、「こちらこそ、僕らにこんなに素敵な体験をさせてくれて、ありがとう!」と言って、二匹の頭を、コチョ、コチョ、と、なでてくれました。
「人間と動物の家族か……。いいもんだな。」うさたんが、みんなの喜び合う様子を見ながら、しみじみ言いました。
「さあ、次のが焼けたよ。みんな、好きなだけ食べておくれ。」みんなが話している間も、ずっとたき火の番をしてくれていたラクたんが、焼き上がって冷ましておいた栗を、うさたんに渡したので、うさたんは爪でまた一つずつむいて、小さい者から大きい者の順に、配ってくれました。
再びたき火を囲んで、栗を食べながら、みんはいろんなことを、パパとママに話して聞かせました。
天使たちがどこから来たのかや、佐藤家の中と外で、どんなに天使たちが大変な思いをしたのか、また、仲間になった動物たちが、いかに仲良く頑張って協力してくれたか、などです。そして、天使たちが紗矢と真琴につかまってしまったけれど、思いを伝えあった事で、お互いに分かり合えるようになって、このシュガー・マウンテンまで来れるようになった、といういきさつまでを話すと、パパは、「まさか、僕らの知らないところで、そんな大冒険が展開していたとは……。」と言って、「ほんとねぇ。書斎でちらっと天使の脚を見た以外は、全然気が付かなかったわ。」と言うママと、しきりに感心し合いました。
「そんな大苦労して、せっかくここまで来れたのに、天使たちが元の大きさに戻れないのはくやしいよなぁ。」
うさたんが、残念そうにペチリと枝で地面を打って、言いました。
「ねえ、天上って、どんなところなの?」チュッチュが、ずっと気になっていた事を、天使たちに聞きました。
ママヌエルが、もうだいぶ日が暮れて、星もちらほら見え始めた薄暗い空を見上げて、「お花畑が広がっている野原に、雲の峰のわき水からはじまるきれいな小川が流れていて、わき水のところまで登る道中に生えている草木からとれる大粒のしずくのような木の実や果実は、みずみずしくてとってもいい匂いがするよ。」と教えました。
「学堂には、読み切れないくらいの本があるの。建物は太い蔓のような高い高い塔になっていて、らせんに上る通路の壁には、本が並んだ棚があって、上に行くほど、面白くて難しい本になっていくの。だけど、私はまだ、ちょっとしか上った事がない。天上に帰れたら、お友達ともう少し上まで行ってみるつもりよ。」これはナナエルの説明です。
「音楽堂からは、いつも天使の誰かが弾いている、優しい音楽が聴こえてくるの。遊びに行ったら、楽器が弾けない私のために、お友達が『キキエルちゃん、歌って。』と言ってくれるの。それで、私は、演奏に合わせて、お友達と一緒に大きな声で歌うの!」キキエルが、その情景を思い浮かべながら、うっとり頬杖をついて答えました。
ママのひざの上で栗を食べ終わって、丸くなったるきあは、なでなでしてもらいながら、天使たちから美しい天上の話を聞くうちに、気持ち良くなって来て、うとうとしはじめました。
想像のふわふわまふまふ、あまあまのおうちは、想像の中だけのものでした。
ちょっとしょんぼりしたけど、それ以上にうれしいこともありました。
じっくり焼いた栗の、なんとおいかったこと!
そして、しょんぼりする自分を慰めてくれた、うさたんの優しさ。
ますますファンになってしまいます。
パパとママも仲間になってくれたのには驚きましたが、おかげで、心強さも嬉しさも百倍です!
あとは、何とかして、天使たちを天上に帰してあげる方法が見つかったら、最高なのですが……。
花さんも、天使たちの語る天上の様子に魅了されて、隣に座るメイに、
「素敵なところねぇ。メイちゃんと一緒に行けたらいいな。」と言いました。
メイは、天上が高い所にあるようだと理解していたので、
「あの、お山のてっぺんの、キラキラ光っていた木に登れば、行けるのかな。」と、つぶやきました。
それを聞いて、うさたんとるきあが、ピクン、と、同時に耳を立てました。
〝サトウカエデの木〟
天使たちを天上に帰すには、やはり、ちょっとでも空に近いところに行くのがいいのでしょう。今一番近くにある、一番高い場所といえば、そう、この山の頂上の、サトウカエデの木のてっぺんです。
『大きな大きな、見たこともないほど大きな木。これに上るなんてこと、出来るだろうか?』
るきあは考えます。
『でも、一番木に登れそうなのといったら、体が軽くて、そこそこの大きさで、つめをもっている自分たち、猫だろう。(残念なことに、降りるのがへたくそなことをわかっていません!)……ひとりなら、あたしも、のっけられるかも!天使ちゃんにつかまってもらって木に登るの!あたしだって、いちおう、猫だし!』
一人前の猫又なら、きっと空も飛べるのでしょう(たぶん)。でもまずは、できるところから全力で。勇気を出して名乗り出なければ。
おいしいおいしい栗で元気を取り戻したるきあは、「はーい!」と手をあげます。
すると、なんとうさたんも、同じタイミングで、手をあげていました。
「お、かぶったな。」
「にゃ!わたあめちゃんとかぶった!嬉しい!」
「となると、思いついたアイデアも、同じだろうな。」
「たぶん!」
「じゃあ、一緒に言うぞ。せーの、」
「「サトウカエデの木に登ろう!!」」
うさたんとるきあの提案に、一同は「おおー!!」とか、「なるほど~!」とか、「その手があったか!」などと、めいめいに声を上げて感心しました。
「やった~!当たった~!」アイデアのもとになる言葉をつぶやいたメイも、大喜びです!
「ここらで一番高い場所といったら、シュガー・マウンテン名物のサトウカエデの木のてっぺん、しかないからな。」うさたんも、これ以上の名案はないとうなずいて、満足そうです。
「まず、あたしが天使ちゃんをひとり乗せて、登ってみる!」 るきあは、みんなが元気を取り戻したのを見て、ますますはりきると、ゆいたんを見て、「ゆいたんも、一人、ふたり、のっけていけるかな?どう?」と、ママのひざの上に立って聞きました。
ゆいたんは、ほっくりした甘い栗をたくさん食べてお腹いっぱいだったので、突然盛り上がりはじめたみんなを、パパのひざの上から、ゆったりぐるりと見まわしていました。
確かに、ゆいたんは木登りが得意なので、するする登っていくことはできそうです。たぶん、天使たち三人だって、がんばれば乗せて登ることもできそうですが……。
しかし、佐藤家の庭の低い木の上からなら、ジャンプして軽やかにおりられるゆいたんでも、こんなに高い木に登っては、ジャンプで下りるなんてさすがにできなさそうです……。
でも高いところは気持ちいいので大好きなゆいたんは、登ってみたい気持ちもあります。
「どうしようかなぁ~。」
ゆいたんは、空を見上げて、思案しました。
メイも、天使たちのために、なにかしたくて仕方がなくて、「僕も、うさたんやるきあちゃんのお手伝いをする!つたを咥えて木に登れないかな?それに天使ちゃんたちが掴まればどうかな?そして上まで引き上げるの!」と言いました。
「ナイスアイデア!」真琴が褒めたので、メイは嬉しくてその場でクルクルと回って見せました。でも、すぐに「あっ。」とつぶやくと、「ずーっと掴まってるのは疲れるよね?」と、天使たちにたずねました。
キキエルは、空き地をかこむ木々のこずえの向こうで、シルエットのように黒くそびえ立つサトウカエデの木を見上げると、「うん。途中で手を放して落ちちゃいそうだよ。」と、身震いしながら言いました。
花さんも、みんなが天使たちを天上へ帰す方法を熱心に話しているのを聞きながら、自分も役に立ちたいと、一生懸命にかんがえていました。なかなか言葉にはできせんが、高いところに登れば良いとか、木に登るとか、つたで引っ張るとか、みんなの素晴らしい意見に、その通りと真剣にうなずくうちに、ふと、パパとママの方を見つめました。
パパとママはみんなよりも背が高いから、もし動物たちで木に登るにしても、高いところまで持ち上げてもらうことは出来るんじゃないだろうか……。そんなことを、花さんは思いました。
言いたい。でも、みんなで盛り上がっている会話の中に入るだけの、勇気はありません。
花さんが、手をあげかけては、引っ込めてもじもじする、という事を繰り返していると、その様子に、るきあが気が付きました。
何か言いたそうだと思ったるきあは、そうっと優しく、「花さんのアイデアも、きかせて?」と声を掛けました。
みんなが自分に目を向けたので、花さんはドキドキしましたが、せっかくのるきあの親切なので、がんばりたいと思って、深呼吸をすると、
「あのね、パパとママに、手伝ってもらったら、どうかなって、思ったの。みんなよりも背が高いでしょう?動物たちを、木の高いところまで持ち上げてくれたら、助かるんじゃないかな、と思って……。」と説明しました。
すると、「ナイスアイデア!」と、真っ先に、紗矢が褒めてくれました。
パパとママも、「ナイスアイデア!」「手伝うよ!」と、笑顔で言ってくれました。
みんなも、パパとママの協力が得られることになって、大喜びです!
メイから「やったね!」とお祝いを言われて、花さんは、嬉しそうに、「うん!」とうなずきました。
メイは、人間ってすごいなぁ!と普段から思ってるので、もっと知恵を借りたいな、と思いました。
動物たちが知らないこともたくさん知っていて、出来ないことも出来るのです。
便利そうな不思議なものも、いっぱい持ってますしね!
今なら言葉も通じるから、チャンスです!
「パパたちなら、いい考えがあるかも!天使ちゃんたちが疲れずに上まで登れる方法ないかな?リュックの中に入ってたみたいに、何かに乗ったままで。」メイは、パパとママを見上げて、たずねました。
「そうだなぁ……。」パパは、腕組みして考えてみましたが、「まず、木の上の方まで、長いツタを咥えたり、体に結んだ状態で安全に登れる者が必要だよね。上の方の横枝に、ツタを渡して、下にたらしてくれれば、あとは一方にリュックを結んで、もう一方を僕らが引っぱる事で、リュックを引き上げられるようになる。」
「ナイスアイデア!」ママから褒められて、パパは照れ笑いを浮かべながら、「ありがとう!」と言いました。
「長いツタならあるよ。さっきラクたんを木にしばり付けるのに使った丈夫なやつが。」うさたんが、走って行って自分の巣穴に入ると、すぐにツタの束を持って出て来ました。
「しかし、これを体に結び付けて、てっぺん近くまで登るのは、さすがにきついな。」
細くて丈夫なツタですが、長いので、高く登るほど、結構な重さになるのです。
ママが、ひらめいた、というように、すぐさま手をあげました。
「はい、ママどうぞ!」パパが、司会者みたいに指名したので、紗矢と真琴は、クスクス笑いました。
「この中で木に登れるのは、誰と誰なの?」
ママから聞かれて、うさたんとるきあとゆいたんが、「はーい!」と言って前脚をあげました。その横で、メイも「はーい!」と、前脚をあげています。
「じゃあ、木のてっぺんまで登って、安全に下りて来れそうなのは、誰と誰?」
うさたんのほかは、前脚を下ろしました。
「それじゃあ、うさたん以外で、木のまん中くらいまで自信を持って登れそうなのは?」
ゆいたんが「はい!」と元気に前脚をあげました。るきあは、あげるかどうか、ちょっと迷っているようです。
「じゃあ、るきあとメイの内で、一番低い横枝まで、自信を持って登れそうなのは?」
今度はるきあとメイが、「はい!」と元気に前脚をあげました。
「メイちゃん、ほんとに大丈夫?!」花さんが、おろおろ声で聞きました。
「うん。家で真琴ちゃんに教わって、ベッドのシーツを上り下りして鍛えてるから、大丈夫!それに、僕もうさたんのように強くなりたいの!」
大変な事になりました。
ママの発案では、まずるきあとメイが一番低い横枝まで登り、パパの投げ上げたツタの先端を受け取ります。
続いて、ゆいたんがその横枝まで登り、ツタを咥えてから、さらに高い場所の横枝まで登って行きます。
ゆいたんがそこにたどり着いたら、今度はうさたんが、ゆいたんのいるところまで登って行きます。
着いたらうさたんは、ツタを体に結び、てっぺん近くの横枝まで登ります。
てっぺん近くの横枝に着いたら、うさたんはツタを、横枝の上に渡して、木の下で待っているパパたちにたらすのです。
この方法なら、ゆいたんとうさたんがツタを持って登る距離が短くて済みますし、途中の枝にいる動物たちにツタを持ってもらう事で、重さも軽減できるでしょう。
さらに、動物たちが木を下りるときは、上に引き上げたリュックに入ったりしがみついたりして下りられるので、下りるのが苦手な猫たちにとっても助かる、という寸法です。
「ナイスアイデア!」みんなは一斉にママを褒めましたが、上手くいくか、一か八かのところもあるので、特に登らない組の中には、とまどっている者も多かったのです。
ずっとアイデアを出せずにいたチュッチュが、心配で心配で、「私にできる事はない?」とみんなに聞きました。
すると、うさたんが、「チュッチュには、ゆいたんと俺が目指すのに具合良さそうな横枝を、見つけて教えてほしいな。」と言ったので、チュッチュは小躍りして、「まかせて!止まる枝探しなら、一番得意な分野だもの!」と答えて、すぐに飛び立とうとしました。
パパが、「待った!」と止めて、「もうだいぶ薄暗いから、みんなで移動しよう。それと、僕は車から、懐中電灯と毛布を取って来る。みんなは先に山頂に行っていて。僕が戻って来たら、作戦開始だ。」と言ったので、みんなは「がんばろうね!」「気を付けてね!」などと言い合いながら、立ち上がって、山頂に向けて出発しました。
今回の挿絵は、キャラクターのサイズ比較図にもなっています。
それぞれの大きさの差を知る事で、物語がより具体的に想像できるようになるでしょう。