愛
姶良部ゆうは、ホットドッグを愛している。
「ホットドッグが好き」なのではなく「ホットドッグを愛している」のだ。
そこには厳格な線引きがある。
例えば、彼女はプリンが大好きだ。しかしプリンにも色々なプリンがある。ケーキ屋の高いプリンだってプリンだし、スーパーの安いプリンだってプリンだ。彼女が好きなのは安いプリン限定であり、高いプリンには全く興味がない。
一方、ホットドッグの場合。彼女は安いホットドッグも高いホットドッグも、それが「ホットドッグ」と認識できるものであればすべて喜んで食べる。まだ食べたことのない新しいホットドッグを見かければ、少々高くても自分のお小遣いで買う。ドッグパンにフランクフルトを挟んだだけのシンプルなものも、素材に拘り豪華にトッピングされた高価なものも同じように喜ぶ。別に美味しくなくても構わない。不味ければ不味いで満足できるらしい。
「美味しいから好き」というのは、彼女に言わせれば「愛が浅い」。深く愛したとき、人はむしろその不味さをも喜んで受け入れるようになるのだという。
私も『あの子』たちを、相手の見た目や性格などに関わらず愛でることができる・・・と自分では思っているが、実際はどうだろうな。
きちんと愛せているだろうか。そう考えてしまう内は、まだ愛が浅いのかもしれないなぁ。




