背黄青ささみは籠のなか
背黄青ささみは、いつも人かごのなかに閉じ込められていた。
かごの外にいる鳥が、たまに近づいてきては何か言ってくる。
「ピチョクチョ、チョッ、ジュジュチュカイチェン」
しかしささみには鳥のことばなど分からない。
鳥が支配する町、鳥神町では鳥が人のように暮らし、人が鳥のように飼われていた。ペットショップでは人が人かごに入れられて愛玩動物として販売されている。
人は高級ペットとして扱われており、鳥神町で暮らす鳥たちにとって人を飼うのは一種のステータスだった。ささみも三年ほど前に、この背黄青家に高値で買われてきたのだった。
(ママとパパは元気かな。まだあのペットショップにいるのかな)
ささみは自分が生まれ育ったペットショップのことをたまに思いだしながら、鳥たちに逆らわず人かごのなかで静かに暮らしている。
背黄青家の鳥たちは人かごをよく掃除してくれるし、餌も欠かさず定時に過不足なく与えてくれる。かごから出してもらえることはほとんどなかったが、頭を撫でられたりクチバシでチュッチュされるのが嫌だったのでむしろ閉じ込められたままのほうが落ち着けた。
現状、彼女には特に不満はないようだ。




