是苦保しいなのお小遣い
①毎日百円。
②毎月4千円。
③毎年5万5千円。
是苦保しいなは「お小遣いをどの形式で貰いたいか」を父親から問われた。
しいなは今まで①の形式でお小遣いをもらってきた。しかし今年の元日、父親から形式変更案が出されたのだ。
彼女はもちろん『③で』と思ったが、即答を控え、考えた。
「父上。質問してもよろしいか」
「構わぬよ。なんだね?」
「③を選んだ場合、お小遣いは元日に頂けるのでしょうか」
「元日に手渡すが、安心したまえ。お主がどの選択をしてもお年玉はお年玉で別に用意するし、選択によってその額を変えることはしないと約束しよう」
さすが父上。娘の思考など容易に察する。しいなは③を選んでお年玉が減ったり無くなったりする可能性を考えていたが、その心配はなさそうだ。
しかしそれでも③は怪しい。話がうますぎる気がする。
これが算数の問題なら③が正解だろう。でもこれは違う。なにか罠、あるいは意図があるはずだ。
そもそも③は、毎日しっかりお金を管理できてはじめて旨味がある選択肢だ。もし、お小遣いをもらってすぐ使いきってしまえば、残りの日々をお小遣い無しで過ごさねばならなくなる。それは最悪の事態といえる。
しいなは胃痛が生じるほど悩みに悩んだ末に、結局②を選択した。
①は現状維持でつまらない。しかし③は怪しいし、怖い。だから②。消去法の②。
「ね。あの子②を選んだでしょ」
「なんで③にしないかなぁ。どう考えても③一択だろ・・・」
「じゃあ、娘のお小遣いはパパの財布からお願いね~」
娘がどちらに似たかを父親と母親は争い、小遣いの出所を賭け、父親が負けたのだった。




