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人理しずかは生きている
(べつに死にたいわけじゃないけど)
(でも)
(なんで私は生きているんだろう)
人理しずかは公園の滑り台に寝そべりながら、ひとりそんなことを考えていた。
空を見る。鳥が飛んでいた。
(鳥は空を飛べるけど、それは幸せなことなのかな)
(もし私が空を飛べるようになっても、きっと私は自分を幸せだなんて思わない。行きたい場所なんてないから)
目を瞑る。棺のなかにいるイメージを思い描く。
心を覆う灰色の雲が晴れていく。ここでこうしていると、いつも不思議と穏やかな気持ちになれた。
(これが、死ぬってことなのかな)
(なんにもなくなる感じ。私が消えてなくなる感じ)
(私は消えたい。このまま静かに、そっと)
(ぐぎゅるー)
お腹が鳴ったね。さあ、家に帰ろう。暖かいコタツに潜りこんで、ほかほかの肉まんでも食べようじゃないか。




