曇りの日。飴野おとねが家でお昼寝をしようか迷っていると、待っていた雨が降り始めた。
彼女は慌ててカッパを着ると、家のそばにある公園まで走って行き、木陰のベンチに座った。

雨のとき、おとねはよくここに座って雨宿りをする。そばに立っている木が、ちょうど彼女を雨から守ってくれる。
ここに座り、しんみりと雨の音を聴くことが彼女のいちばんの楽しみだった。
おとねにとって雨の音は、空から落ちてくる雨粒たちが奏でる心安らぐ音楽であり、この席は雨の音楽を楽しむときの特等席だった。
誰もいない公園で彼女はひとり、雨のオーケストラを堪能する。
雨はしばらくやみそうにない。