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又三手るなに関する報告
又三手るなは夢をみていた。
世界の果てで、ひとり。なぜか全身が傷だらけで、痛くて動けない。
彼女は誰かにみられていた。
彼女はその視線を嫌悪した。「みるな」と思うが、しかし怖くて何も言えない。彼女は抵抗できず、ただみられ続けるしかない。
彼女がこんな夢を見たのは最近、知らない人の視線を感じて嫌な気持ちになることが多いからだろう。
顔や目をじっとみられるのも嫌だったが、なにより不快だったのは明らかに首より下をみられているのに気づくときだった。「ぶっとばしてやろうか」と思うほど腹が立つ。
それがありふれている日常。自意識過剰だと笑われる価値観。「みられるのが嫌なら外を歩くな」などと責められる通念。悪いのは誰。悪いのは何。
朝になり、彼女は目を覚ます。夢の内容は覚えていない。
腹ペコだった。




