魔女のそのかに関する報告
魔女のそのかは、ほうきを使わないで空を飛ぼうとしていた。
彼女はいま、じぶんが履いているくつを魔法で浮かせている。浮かせたくつに乗っている状態なのでバランスを取るのが難しくて、すぐにひっくり返ってしまう。しかしうまくバランスを維持できればくつでもほうきと同じように空を飛べるはずだと彼女は考えている。
魔女は、飛ぼうと思えば道具を使わなくても飛ぶことができる。「道具は飛ばせるけど自分は飛ばせない」なんていう縛りはない。ただ、道具を使わないと快適に飛べないのだ。
例えば自分自身を空に向かって浮かび上がらせようとすると、自分の骨や肉だけでなく、体内の血液や臓器などにもそれぞれ浮く力が発生してしまい、血が頭に集まってしまったり腹の中で胃が持ち上げられてオエッてなったりする。ほうきを飛ばせてそのほうきに乗るのと、自分の身体を直接飛ばすのとでは身体にかかる負担の質がまるで違う。だから魔女は自分自身を飛ばそうとしない。
そのかは今日、学校で自分用のほうきを無くした。家まで歩いて帰るのが面倒臭くて、それでくつでも飛べないかを試している。
このあと30分ほど頑張ったがうまく飛べなくて、結局歩いて家に帰った。




