跡野まつりは前髪ぱっつん女子になりたくて、前髪にハサミを入れた。そして悲劇は起きた。

切りすぎた。狭いおでこも隠せぬほど短くなった前髪が彼女の心を凍らせる。
「前髪は顔の一部」とは誰が言った至言だったか。前髪にハサミを入れるということは、顔にメスを入れるような慎重さと技術、そして覚悟が要求されるということだろう。幼い彼女にはその全てが欠けていた。
前髪はしばらくすれば元に戻る。取り返しの効かぬ失敗ではないのは幸いだった。
これからも跡野まつりの観察は続けたい。彼女のおでこが再び前髪で隠れるその日まで。