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火場狩かくなに関する報告
火場狩かくなは「ひ」という文字を書くのが苦手だった。どう書いてもバランスがおかしくなってしまう。もう少し上手に書けるようになりたいと思った彼女はノートに何度も「ひ」を書いて練習した。
ひひひひひひひひひひひひひひひ
ひひひひひひひひひひひひひひひ
ひひ
三十個ほど書いた辺りから、彼女には「ひ」の丸い部分がだんだんと人の鼻に見えてきていた。直線部分は眉毛とか目に見える。
なんとなく思い付きで、大きな「ひ」を書いて、そのなかに小さな「ひ」を書いてやると人の顔っぽくなった。ついでにもうひとつ「ひ」を書き足して胴体にしてやった。
こうしてひひひ人間は生まれた。
彼女が生まれてはじめて作り出したオリジナルキャラクターだった。
なんだか嬉しくなった彼女は、もっといろいろなひひひ人間を作ろうと考えはじめる。
ひひひ人間は、「ひ」の書き方ひとつで様々な表情や動きを表現できた。
細長いのはママひひひ、大きいのはパパひひひ、小さいのは子ひひひ。ひひひ家族の完成だ。
彼女のイメージのなかで、ひひひ家族が紙から抜け出し自由に動きはじめる。




