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日多里みきに関する報告
朝、日多里みきはパジャマから私服に着替えたあと、左右の足にそれぞれ違う色のくつ下を履いてしまっていることにしばらくしてから気がついた。
右足は水色の、左足は桃色のくつ下を履いている。水色のショートジーンズと桃色のフード付きTシャツに着替えたのでうっかりしたらしい。
うっかりしすぎだわと思いながらどちらのくつ下を脱ごうか迷って足を見ているとき、ふと彼女は思った。
「このままじゃ駄目だろうか」
全身鏡の前に立ち、自分をなるべく客観的に眺めてみる。
友だちや親から「履き間違えてるよ」と言って笑われる自分を想像する。しかし見れば見るほど彼女は色ちがいのくつ下を気に入った。
衣料品店で左右の色柄が異なるくつ下を売っているのを見たことがあるし、案外いけそうな気がする。しかし頭のどこかでは「やめておけ」とも思っている。
彼女にとってそれは合う合わないの問題の前に、常識に従うかどうかの問題であった。結局彼女は両足を桃色のくつ下に揃えて家を出た。
あのままで良かったんじゃないかとまだ悩みながら、彼女は学校に向かって歩いていく。




