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第六十四話 俺のゾンビな彼女

 10月31日、ハロウィンだ。


 俺の家でパーティーする話も出たのだが、愛はそれなら自分の家でやろうと言い出した。


「お父さんはいつきくんに会いたいって言ってたわ〜 お母さんはあれだから会わせたくないけど、みんなを呼んでリビングを自由に使っていいよって」


 夏休みから10月まで、色々あって、俺ら7人はすっかり仲良くなった。


「あと、部屋もたくさんあるから、みんな泊まっていっていいってお母さんが言ってたわ」


 というわけで、俺らは愛の家にやってきた。


 愛は一足先に帰って色々準備してるから、ここにいるのは愛を除いて、俺、芽依、結月、はると、れん、葵の6人だけ。


 俺と葵は何度も愛の家を見たことがあるから、別に何ともなかったが、ほかの4人は驚愕の声を漏らした。


「大きい……」


 確かに、そう思わない人はもっと金持ちか、辞書に大きいという単語がない人のどっちかだけだと思う。


 インターフォンを押して、愛のお母さんの声が聞こえてきた。


「「「お邪魔します!」」」


 みんなしてそういうと中々壮観だなと思った。


「あら、待ってたわよ〜 どうぞ入って! 入って!」


 愛のお母さんは相変わらずノリがいいというか可愛いというか……


 玄関に入ると、俺らは思わずに後ずさった。


 そこにいるとは1匹のフランケンシュタインと1匹のエルフだった。


「いつきくんは誰かね?」


 フランケンシュタインはそういうと、俺らはまるで死神に声かけられたかのように、凍てついて動けなかった。


 しばらくすると、芽依は恐る恐る俺を指差した。


 裏切ったな! 芽依。命と引き換えに俺を売ったな!


「君がいつきくんかね」


「は……い」


 終わった、俺の人生。さよなら母ちゃん、愛。芽依、地獄で会おう……


 すると、フランケンシュタインとエルフは後ろからクラッカーを取り出して、俺らに向けて盛大に放った。


「「ハッピーハロウィン!」」


 どうやら、フランケンシュタインとエルフは愛のお父さんとお母さんだったらしい。


 ノリが良すぎ。こっちは死ぬかと思った。てか、コスプレのクオリティ高すぎるだろう……本物としか思えなかった。


 フランケンシュタインもさることながら、お母さんのエルフのほうも露出度多めのなんとも言えないセクシーな格好だった。愛の家族ってみんなノリノリで子供みたいだな……


 俺らはフランケンシュタインとエルフにリビングまで案内されると、ソファー越しに愛の後頭部が見えた。


「「姫宮さん」」


「愛ちゃん」


「愛」


 俺らが呼ぶと、愛はゆっくりと振り返る。そして、みんなの顔が恐怖に染まった。


 そこにいるのは、皮膚の色が紫か黒か分からないような、全身に縫い跡が付いてる女の子だった。ホラー映画の中に出てくるゾンビそのものだった。


 そのゾンビが微かに笑うと、俺らの恐怖はより一層刺激されてしまった。


 なにがあった? 少し早めに教室を出た愛の身に何があった? 俺の最愛の彼女は誰に殺されたんだ!


「みんな、ようこそ~」


 歓迎している? どこへだ。地獄か? それとも冥界?


 いや、ゾンビなんだから、地獄も冥界もないのだが。つまり、俺らも同じ目に遭わせるつもりなのか。


 愛がゾンビになっているのなら、俺も喜んでゾンビになろう……


 みんなも諦めたのか、フランケンシュタインとエルフに連れられて、奥の部屋に入っていった。


 俺だけがここに残った。そうか、俺にまだ理性がある間、ゾンビになった愛と2人きりにしてくれたのね。優しい……このあと、俺も殺され、ゾンビにされるのか。


「キスorハグ、それともわ、た、し〜」


 えっ、なにを言ってるの? やはりゾンビになったから、愛には理性が残っていないのか。


 って、そんなわけあるか! いくらなんでもコスプレの質が高すぎるって! まじでゾンビだと思ったわ!


「トリックオアトリートだろう! しかも、お風呂にする? ご飯にする? それともわ、た、しみたいに言うなよ! ハロウィンの雰囲気が台無しだよ……」


 愛があまりにも可愛いせいで、俺は照れ隠しにブツブツとツッコミを入れた。


「じゃ、両方ね〜」


 そういって、愛はソファーから飛び上がって、俺を抱きしめて唇を合わせた。


 芋の味がする。なるほど、唇が紫になってるのはサツマイモかなにかのお菓子を潰して塗ったのだろう。


「美味しい?」


 それは何に対しての質問なのだろう。愛自身? それともサツマイモ?


 って、愛を美味しいと思ってしまうくらい俺はおかしくなってしまった……


「うん、芋は好きだよ」


「なんで芋の話をするかなー」


「えっ?」


「彼女より芋が好きとか立派な浮気だと思うなー」


 あれ、ひょっとしたら、愛はほんとに自分が美味しいかって聞いてきたのか。


 どうやら、俺だけでなく、愛もおかしくなったようだ。


「愛は……美味しいよ……」


 自分で言っといてなんだが、恥ずかしさが半端ない。きっと俺の顔は今真っ赤になっているだろう。


 だが、メイクのせいで、愛の顔の色は紫黒のまま。シュールすぎる……


「よかった〜」


 そして、俺はまた()()()を味わった。





 しばらくして、狼男、リザードマン、アマゾネス、妖精とサキュバスが出てきた。


 うん、いかにも日本のハロウィンらしい。もうつっこまないから……


 ちなみに、狼男ははると、リザードマンはれん、アマゾネスは葵、妖精は結月、サキュバスは芽依だった。


 芽依をサキュバスにする愛のお母さんの気持ちは分からなくもない。あの胸はいかにも男にとって凶器だもんね。


 妖精はエルフに勝るとも劣らぬような露出度と可愛さで、はるととれんは思わず唾を飲んだ。


 それに対して、芽依は胸を反らして、「ガオー」って叫んだ。


 やはり天然は簡単には治らないようだ。芽依は自分のキャラを把握できていないのだろう。


 愛の方を見ると、そこにはうすら笑いを浮かべたゾンビの姿があった……可愛いけど怖い。


 この日、みんなは思いっきり羽目を外して、自分のキャラになり切って楽しんだのだ。


 俺はというと、愛にお揃いのゾンビにされてしまった……

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