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男の娘は神様です

 戦闘が終わった直後、倒された3人をそのままに上から支部長が降ってきた。

 それに煙寿は動じずにまた戦闘モードに切り替えた。


「煙寿!やはり君は星零に値する者だ!君になら訓練の相手を頼めそうだ!」


 そう言う奴の目は狂人のそれだった。

 何かに飢えている狼と例えることもできる。

 そんな支部長の頼みを煙寿は受けることにした。


「あんたの実力も知っておきたったんだ。ちょうどいいからお受けしてやるよ」


 喧嘩腰でそう言うとさっき煙寿がしたようにいきなり支部長が突っ込んできた。

 それを無傷な煙寿はひらりとかわした。

 その時横を通り過ぎる支部長はずっと煙寿を見つめていた。


「これは相手に不足なしどころじゃないね。支部長クラスのくせして戦闘にたけてる」


 こう言って相手の強さを認めた煙寿は本気で遊ぶことにした。

 普段なら絶対にしない遊びへの全力投球だ。

 能力を完全に解放して支部長に向けて戦う意思をぶつける。


「あんたにならかわいいを捨てきって戦っても平気そうだ」


 そう言いつつ広範囲に自分の空間を展開した。

 訓練(本気のバトル)が本格的になればこれが必要になるだろう。

 さて、ここから獣と男の娘の戦いがマジで始まる。


「全員見ておけ!これが星零の私と支部長クラスの戦いだ!」


 そう言って倒れる全員に見るように仕向けた。

 星零という完全戦闘特化の隊員と、星四という実力と実績の元に成り立つ支部長クラスは双方がただの隊員と違う。

 そんな奴らの戦いを見るのはいい経験になると考えたのだ。


「さぁ!百鬼の王と呼ばれる七角歌村!いざ参る!」


 背が高く筋肉質な体で一歩踏み込んで煙寿を威嚇した。

 それに対して煙寿は不気味に笑いながら言ってやった。


「反転天邪鬼神坂煙寿!あんたを叩きのめしてやるわ!」


 本気でオーラを発生させた2人はそれをぶつけた。

 力のデカさは互角であることがこれで証明された。

 そこから歌村支部長は能力を発動して見せつけた。


「あたしの能力は『妖怪変化(もののけのぬし)』だ!どんな妖怪の力でも利用できる!これの鬼の力でねじ伏せる!」


 そう言い終えると能力で自身を赤鬼へと変えた。

 そして金棒を取り出しながら握って構えた。


「反転は私のメインの力!これに逆らうことは叶わない!」


 この言葉ののちに支部長の金棒は錆びて砕け散ってしまった。

 それを見て支部長は即座に理解した。


「反転で遅い錆を早めたか。しかも崩れるほどまでに進めるとは、恐ろしいガキだな」


「それに気づくあんたも恐ろしいよ。錆が反転で進行し切るなんて普通は思わないんだから」


 理解されたことに驚いたのを隠すように煙寿はこう言った。

 この時の煙寿の思考は万能への対処になっている。


「はてさてどうしたものか。鬼の怪力でも負けかねない。なら、今度は()かすとしよう」


 その発言で今度は9本の尾をはやした化け狐へと姿を変えた。

 まぁ、筋肉がある分美しさに欠けるが危険度は鬼より遥かに高い。


「さぁ、幻に呑まれなさい!」


 その一言と同時に腕を振って幻覚を煙寿にかけた。

 しかし、煙寿は笑って能力を発動した。


「幻覚は現実へ」


 この一つの反転で楽々に脱出した。

 これを見た支部長はニヤニヤとして次に切り替えることにした。


「簡単に破られるなら今度はこっちだな。いや、これは最終手段と言ったところか」


 そう言うと一番楽しそうな笑みを浮かべてその妖怪に姿を変えた。

 それを最初に見た時、煙寿は嘘だろと言いたげな表情で驚いた。

 それは反転系の能力者の仲間であり強敵になる天邪鬼そのものだった。


「さぁ、素敵な時間を奪ってやるよ!逆にして、最悪な時間をくれてやるよ!」


 面倒になった支部長は勝利を確信して煙寿の妨害を始めた。


「うわっ!めんどくさ」


 反転をしようとして出来ないのを確認して煙寿はまずいと思ってしまった。

 それを見抜いて支部長は殴りかかった。

 その状況で最善の選択はかわすこと。

 それで煙寿はすっと下がって攻撃を地面に打たした。

 すると、地面はその鍛えられた拳によってヒビが入った。


「避けて正解だ。肉体戦闘で負けることはまず無いからな」


 この一言に煙寿はビビった。

 そして、また力を使う判断をする時だと確信した。


「その能力無しの戦闘でも勝ってやる」


 そう言うと勝つために力を見せた。

 それは光に包まれた後に見えるツノと美しい衣を纏ったものだ。

 力を発動するのに目をつぶっていたが、目を開くと白目は黒くなって瞳が赤くなっていた。

 その状態をひと目見て支部長は確信した。


「やはり、さっき感じた力は君のものか。先にこの姿になっておいてよかった。神に対抗するのに抵抗力なしはきついからな」


「......」


 今のに反応しなかったので確信をついたことを言った。


「君は覚醒者だな。にわかには信じ難いが純白の天使以外の覚醒者がいるとはな」


 その言葉を煙寿は気にしない。


「早すぎた。強敵を前にするのは」


 そう言うとさっきまでと違って余裕と冷静さを手にしたようで戦うことをやめて背を向けた。

 それにイラっとした支部長は肩に触れようと手を伸ばした。

 そして触れかけた瞬間に反対の方を向かされた。


「なっ!」


 驚いて振り返ると煙寿はそのまま歩いて一番近い負傷者の咲彦のところに向かっていた。

 近づくこともできなくなった怪物を目の前にして天邪鬼状態の支部長は悔しがって唇を噛むことしか出来ない。

 そんな状況で煙寿は腹パンで内臓にダメージをおった咲彦のそばにかがんだ。


「さっきはやりすぎた。強者のする行為で無かったことは詫びよう」


 そう言うと神域の反転で普段ならできない人体への影響を使った。

 それによって傷を無傷に変えた。

 この能力で治った咲彦は痛みが完全になくなったことに驚いて思わずに疑問の顔を向けてしまった。

 それを気にせずに今度は真昼の元に向かい。

 そこで頬の傷に反転を使った。

 なんでも反転できるようになった煙寿は壊れた訓練場も直して見せた。


「支部長、無駄な足掻きをしないでくれてありがとう。天邪鬼という私の下の種族では勝てないのだからそれが正解だ」


 それを言う時の煙寿は普段とは違うとても穏やかな顔をしている。

 それに対して支部長は裏切り者でもある天使と同じ覚醒者を引き入れてしまったことを後悔して苦い顔をしている。


「本当に覚醒者なんだな」


「えぇ、私は今だけ性別も反転している。そんなことが出来るのは神域に達した者だけだからな」


 そう言ってから「ちょうどいいや」と呟いて誰かにテレパシーを送った。

 それも支部長は手を出せず見守ることしか出来ない。

 しかも、覚醒は肉体に元から影響を与えるタイプの能力では出来ないのである。

 つまり、覚醒者を前にしても支部長では勝てる見込みがゼロなのだ。




 しばらくして煙寿は元の状態に戻って言った。


「さて、そろそろ実戦訓練は終了にするのです」


 そう言われてみんなこれが訓練だったことを思い出して煙寿の後を追って部屋に戻って行った。

 支部長だけは残って煙寿を睨み続けたがな。

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