男の娘の就職です
今から数年前にこの世界を変えるウィルスが発見された。
そのウィルスは感染者の肉体に影響を与えて様々な異能力を発生させてしまった。
発見者の博士はこれの実験中に自身が得た能力の暴走で事故死してしまっている。
その事故でウィルスが世界中にばらまかれて、発症した人々はそれを生活に組み込んで便利なものとして使うようになった。
中には神と同等の能力を得て人々を導くような人も現れた。
だが、こういう神もどきが犯罪者グループの頂点に立つことがよくあるので各国のトップは対処するための組織を作るようになった。
それが異能犯罪対処部隊だ。
名前は安直だが能力だけ優れた連中が日本で『異能省』に所属している。
ただ、発症者は適性があるのか人口の半分ちょっとしか存在しない。
数ヶ月前、都市で『異能省』本部所属の純白の天使と呼ばれた男の子が『覚醒』を起こしてしまった。
発見から数年の内では誰も真の神の領域に踏み入った者は居なかったが、この『神城夏芽』が最初の覚醒者として異能省を破壊して全世界で最強になった。
彼はその後行方不明になって要注意人物として世界中で警戒されている。
この事件で異能省は全都道府県に支部を置いて本部の修復の時間を稼ぎつつ仕事を楽にした。
その少し後、神城元隊員によって『覚醒』はごくまれに発症者が人間から変化してより強力な姿になることであると広められた。
さて、こんな世界でも生活するには仕事をしなければならない。
だから、この私『神坂煙寿』は異能省神奈川支部に就職することになりました。
今日は初出勤で今ちょうど白装束の制服に着替えて支部長に挨拶しに行くところです。
それで支部長室に前に着くと他の新入り3名が待っていました。
「揃ったなら入りなさい」
合流した瞬間に中から声がしたので同期達と一緒に入ると、そこには異能省だけの階級で上から2番目の星四を持つ『七角歌村』が座っている。
彼女は支部長達の中で5人しかいない珍しい女性の支部長だ。
その前に立った4人の新入りは頭を下げてから言われる前に自己紹介を始めた。
順番は先に来た順だ。
「星一隊員『黒柳真昼』です!能力は『短い世界征服』です!」
黒髪で高身長の彼女は右手を胸に当てる敬礼をしながら元気に自己紹介をした。
その目には何か目的が映ってるようだ。
「星二隊員の『本城闇広』でーす。『捕らえるもの』で動きを封じるサポーターでーす。よろしくー」
白髪で背が小さな彼も敬礼しているが言葉からはやる気の代わりに正義感が伝わってきた。
異能病の能力者を相手に制限なく能力を使えるここに入らなければ、制限ありだが正義ではある警察に入っていたのかもしれない。
「星一隊員『舞桜咲彦』ですわ。能力は『桜の庭園』で召喚できる桜を自由に扱えますわ」
名前とは裏腹にとても女性らしいピンク髪の隊員だ。
ただ、舞桜という家は今の日本の十大名家の一つなのでとても苦労していたのかもしれない。
「星零隊員の『神坂煙寿』です。能力は『反転世界』で対象を何でも反転か逆転させます」
赤髪で男の娘な煙寿はここで真面目に言った。
しかし、そのせいで同期には大きな困惑が広まった。
その様子を見ている支部長は口元を隠してクスクスと笑ってから説明を始めた。
「彼は聞いた声の通りで男の娘という奴だ。それで階級は特別に認められた者に与えられる星零になっている。星零は金の星を襟を付けないため純白の制服に身を包むことになり、あの大きな功績を残して今も敵では無く英雄扱いする者も多い神城元隊員と同じ名誉な格好になるんだ」
その説明を聞いて謎な同期について彼らは理解できた様子だ。
それを1人ずつ見て確認した支部長は手を組んで真面目なトーンで話を始めた。
「彼のことは一旦置いておいて。諸君、よく発症者管理のための組織に入ってくれたな。正直言って一括管理から切り替えて日が浅いせいで色々と整っていない。それでも発症者はなるべく警察の世話にならせないためにこちらでどうにかしたい。だから、君達は3期の職員として発症者のイメージダウン防止のために主に戦闘メインで働いてもらいたい。いいな?」
ここまで支部長は体勢を変えずに話しきって同意を求めた。
それに対して4人は敬礼して同じことを言った。
「了解です!」
それを聞いた支部長は正式に4人の入隊を認めて彼らのための部署が設置されている場所を教えた。
そこは3階建ての建物の隅にあって裏口がそばにある。
仕事が入ればその裏口から出て現場に向かうらしい。
早速行ってみるとそこはなかなかに広くてきれいな部屋だった。
扉には『異能犯罪対策課』と書かれたプレートが貼ってある。
この部屋で4人は待機しつつ異能者のデータをまとめる職務をすることになるのだ。
その前に初日は色々とやらなければならない。
例えば自分の席を決めるとか。
「さて、机は10個ありますわね。ここは早い者勝ちで競って場所を決めましょう」
咲彦がそう提案すると3人は首を縦に振って同意した。
すると、咲彦はニヤリと笑って宣言した。
「では!好きな場所争奪戦開始!」
それと同時に咲彦は花びらをたくさん召喚して目くらましをした。
作戦通りに行った咲彦は優雅に歩いて3m先の扉に一番近い2席の右の方に座った。
それから目の前の席に目を移すと花びらを消す前に既に真昼が座っていた。
「時間停止の勝利!」
「やりますわね」
真昼は誇らしげにピースして、それを侮れないと思いながら咲彦が褒めた。
それから強い桜吹雪を止めて2人を解放した。
扉に近い席があとは真昼達の隣しかないのを確認した2人は顔を見合わせた。
それで互いに行く方を目線で話し合って決まったらそこに歩いて向かった。
これで部屋の真ん中に縦に並べられた席の右に咲彦と煙寿、左に真昼と闇広が陣取ることに決まった。
その後はしばらく黙って机の上をみんな整頓して仕事用の支給されたパソコンを置くスペースを作ることに集中した。
最初に片付けを終わらせた煙寿はログインして支部長からのメールを開いた。
『今日はもう帰ってよし!明日は戦闘訓練と他の部署への挨拶を行うこと!さっさとあたしの仕事を減らしてくれよ(泣)』
という内容だったのですぐに帰る支度のためにみんなに挨拶して部屋を出て行った。
更衣室に向かって歩いている途中で煙寿は我慢できなくなってものすごいとろけるような笑みを浮かべた。
自宅に帰るのがとても楽しみという感じだ。
それから少しして着替えが終わると表の出入り口から出て、本日の初出勤は終わった。