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logic8.未来の誓い



「ふぅ……」


 神坂はそこまで話して紅音から渡されたお茶を口に含んだ。

 これが神坂がこの街、エリシオンに来るきっかけとなったお話しだ。しかし、寿命の件は伏せて話していた。何故ならば、自分がいずれ消えてしまう存在にもかかわらず他人に話す意味などない。そう神坂は判断したのだ。そして親友を亡くしたばかりの紅音に、余計な不安を与えたくないという神坂の優しさでもあった。

 二人を優しい風が吹き付けた。


「そんな事があったんだ……」


 紅音は神坂の過去を悪気はなかったにしろ聞いてしまった。家族から引き離されるいう悲しみは、紅音にも分かる。だが、神坂と自分では状況が違う。

 紅音はエリシオンに自らが進んで入国した。家族にも再会を約束し、やってきた。しかし、神坂は違う。神坂は家族にも会えず、連絡も取れずにエリシオンにやって来たのだ。ホームシックにもなるはずだ。


「ま、過ぎた事を後悔しても仕方ねぇだろ? 今は、前向いて生きるしかねぇんだ」


 たった3年の命、出来るなら悔いを残さずに消えたい。それが神坂の願望でもあった。

 ついでに自分が消えるまでにいくつもの人の助けになれるなら、自分の手が届く範囲で守ってやりたいとも思う。


「まぁ確かに、ただでさえ陰気臭い顔なのにさらに陰気臭い顔で毎日挨拶されるよりは、今の方がマシよね」


「お前なぁ……、陰気臭いとか結構傷つくぞ? 意外にピュアハートなんだぞ?」


「だって毎日どよーんとした不幸ですー、って顔で歩いてるじゃない」


 あながち否定は出来ない神坂がいた。


(否定できねぇー!! 確かにここ最近は負のオーラを全身に纏ってたからなぁー……)

と、神坂はここ最近の自分を思い返して落胆した。



「だいたいあんたはねぇー」


 マシンガンのような口調で陽気に話す紅音を見て、神坂は強いと思った。

 彼女は先日親友を亡くしたのだ。しかし、彼女はもう泣かない。陽気に自分と話している。無茶をしているようにも見えなくもないが、いや、実際無茶をしているのだろう。しかし、彼女からは何も感じられない。そんな彼女が、神坂は哀れに思えた。

 だが神坂は、何も言わなかった。

 いや、言えなかったのだ。

 自分が今彼女に何をしてあげられるだろうか?

 自分はただ、彼女を助けただけ。そんな自分が、彼女に何を言ってあげられる?


 そんな自問自答が神坂の中に渦巻き、神坂のノドまで出ていた言葉を、のみこませた。


 その行動が、後に彼女を苦しめるなんて、夢にも思わずに。




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