エピローグ
ノベルアップのほうで先に更新してたのですけどこっちは後でまとめて更新するつもりでためてました。
べ、別に忘れてたわけじゃないんだからね!?
「―――というわけなんですよ」
翌日、僕は事務所に出勤した際に、事の顛末を森野さんに報告していた。
「ふええええええ~……」
真綾さんはと言えば、昨日は家に帰る気力もなく、事務所に転がり込んだまま、ソファにうずくまり、僕が買ってきたプリンを啜っていた。
「ようやく、喋ったか」
色々黙っていたことを怒られるかな、と思っていた森野さんの第一声は、それだった。
「え、知ってたんですか?」
「君たちの行動くらい、把握している。あそこに私もいたし」
「えええええええええええええええ!?」
「二人の行動は怪しかったから、人を使って色々調べてた。私も見習いキャバ嬢として、隣の席でお酌していた」
全く気付かなかった。というか、森野さんも相当人が悪い。
「そんな、お金にならないことを……」
「そうでもない、私も一枚、噛ませてもらった」
「はい?」
「君が、梟支配人とした取引、あれ」
「え」
そう言って、森野さんが事務所のオンボロTVをつけると……。
『はい、今日から始まりました、めぐむきっちんのコーナーです!』
タモリ似の司会者が音頭を取っていた。
『新人アイドルの笹垣メグムちゃんがお届けする料理と歌のコラボ!ご堪能下さい!』
司会者がそう言うと画面の中の恵ちゃんが踊って歌って、それに合わせて料理をしている。
「はあああああああああ!?」
何で彼女がTVに!?というか、確かこの学園ではTV番組も生徒が制作して流していたはずである。つまり、彼女はそっち方面に転科した、ということになるのだが……。
「静かに見る」
驚きを隠せないまま、事のなりゆきを見守っていると、司会者が彼女に質問を投げかけた。
『いやあ、非常に美味しい料理でした!メグムちゃんはこの番組からデビューですけど、どういった経緯で?』
彼女は少しためらいがちに口を開く。
『私、前に料理も出すお店をやっていたんですけど……そこでスカウトされて来たんです。それで、やってみようかなって。こうしてもっと多くの人に私のレシピと歌を届けられるのって、凄くやりがいを感じるんです!歌も料理も私の夢ですから!』
歌が夢だったとは、初耳である。
「えーと、何ですか、これ?僕は謝礼を梟支配人に払って、彼の伝手で料理も出来る、別の職業を彼女に斡旋して頂けるように頼んだだけですが……」
「うんそう。だからこのアイドル業を私が斡旋させて貰った。知り合いのTVディレクターのコネを使って」
「……はい?」
「君の服には盗聴器がつけられている。全部聞こえていたから、一枚噛んで儲けさせてもらった。良い金になった」
……最初から、この人の掌の上?
「これに懲りて、二人とも私にはあまり、隠し事をしないほうがいい」
「……言われなくても、そうします」
「ふえええ~ずるいよ、しずかちゃん」
僕らは大きなため息をついた。
『これからも応援よろしくお願いします!私
皆さん
の為に頑張ります!』
僕らの疲れた表情とは裏腹に、TVの中の恵ちゃんは、とてもいい笑顔をしていたのだった。
女性って、強い。




