第93話 遺跡から出る
アリシアとリリアンは一度、皇帝の元へ戻りエルフの姉妹が突然消えた事を報告していた。
「アリシア、それは本当か!?そりゃ、マズイな。あの遺跡には魔法無効化が常に発動していて、魔法が使えないんだ。いくらあの2人が規格外とはいえ、魔法の使い手だからな。急いで救出に行くぞ。あれを用意してくれ。」
彼は執事に何かを持ってくるように命じた。
1分も経たないうちに執事は戻ってきた。
執事の手には巻物状の物が握られていた。
「それって複製されたダンジョンマップですよね?」
とリリアンが皇帝に尋ねた。
「あぁ、そうだ。地下3階までかかれている。それより下の階にあの2人が移動してしまっていたらどうしようもない。」
皇帝の表情はかなり固かった。
彼女たちは急いで遺跡に向かった。
「アリシアと俺で入る。リリアン嬢は1日経って俺たちが戻ってこなかったら皇都のギルドに救援要請を出してくれ。やり方は知ってるな?」
皇帝の真剣な表情にリリアンとアリシアは頷いた。
皇帝とリリアンは直ぐに遺跡に入って行った。
しかし、遺跡に突入してから5分も経たないうちにリリアンが待機している転移門に戻っていた。
「は?アタイ達は何で門の所に戻ってるだ?」
「くっ・・・。ダンジョンマスターがいるのか。」
「拒まれたってことかい?」
「そうなるな。」
皇帝は婚約者(とその義妹)の無事を祈った。
「それで我を報酬として望んだと。」
時空間の女神のところから戻ってきた僕たちは喋る腕時計に事情を説明した。
「主の許可が下りたならそれに従うまで。我の使い方だが、地上の転移門まで戻ったら説明しよう。」
ラックさんの腕に時計がひとりでに巻きついた。
「む?誰か遺跡迷宮に入ってきたな?汝らを捜しに来たようだ。人族の男とハーフドワーフの女だ。心当たりはあるな?」
もしかしてアリシアとエンさんかな?
「締め出して入れないようにできますか?救援に来て遭難されたら嫌ですし。」
ラックさんはそう言った。
「それは可能だが、締め出した後に結界を張る故に汝らが出れぬぞ?どうするのだ?いくらこの魔法無効化が発動している遺跡の中で魔法が使えるとはいえ転移なんぞ使ったら正確な位置に出れず石の中とかあり得るぞ?」
「構いません。」
あ、やっぱりあるんだ。石の中・・・。
「遺跡の魔法無効化の影響下にない所はどのくらいの距離ですか?」
「遺跡の内部全域、距離にして5km四方くらいだな。」
意外に広いな・・・。
「汝の転移魔法は5km以内ではないか?先ほども言ったが、それだと石の中に・・・と言う可能性もあるぞ?」
「ちょっと待ってて下さい。今、創りますから。」
あ(察し)。
「マナミさん、この腕時計をしまって下さい。」
と言いつつラックさんは腕時計を外していた。
ラックさんから受け取った腕時計を収納しようとしたら
【生き物は収納できません!】
と脳内に音声が響いた。
「汝の認識では我は生きているのだな。」
この腕時計、なんだか少し嬉しそうだな。
「仕舞えないなら付けて下さい。戻りますよ?」
そう言ってラックさんは人形から僕が預かっている本体に戻ってきた。
ムゲンノマドウソウセイ発動!
長距離瞬間移動
10km以内の任意の場所に転移する。
よし、成功。
「うむ。転移者特有の破格なスキルと魔法とだな。」
腕時計は感心していた。
僕たちは長距離瞬間移動を使い転移門の所まで戻った。
あれ?
転移門の所まで遺跡の主の能力で戻れたのでは?
「・・・何故、わかったのだ?」
カマをかけただけなんですが・・・。




