第70話 ダンジョンコア
う、胸のところが痛い。
ラックさんはうつ伏せで倒れ込んでいるみたいで
何かが食い込んでいた。
ちょっと体を起こし胸のあたりにナイフが刺さっている事を確認し、コマンドを開きポーションを取り出した。
ポーションを飲みながら胸に刺さっているナイフをゆっくり引き抜いた。
ラックさん!聞こえてますか?
『・・・』
ラックさんから返答がない。気絶しているのだろう。
この部屋に使用人の人がいないか辺りを見渡すとドアの前に女中の人が倒れている。
「大丈夫ですか?」
「う・・・ハッ!ご無事でしたか、奥様!」
僕とラックさんは2人で並んでいると別人に見えるらしいのだが、僕がラックさんの身体にいると彼女にしか見えないらしい。
僕がラックさんの妹である事と、ラックさんを保護したことを説明しなくちゃ。
「僕は妹のマナミと言います。姉は傷の手当てをして保護しました。安心してくださいね。それで、一体何があったんですか?」
「魔物が出現したのですが、奥様が討伐して下さりました。」
先程、部屋を見渡した時に大蛇の亡骸があった。そういう経緯か。
「私の他にも2人程使用人がいたのですが、その者たちが奥様の命を狙っていたみたいでして・・・。」
成る程、胸に刺さっていたナイフはそれか。
「それとそこの扉を確認したのですが開かなくなっています。」
どうやらアリシアの言っていた通りこの部屋は結界で空間ごと隔離されているようだ。
早くコアをどうにかしないと。
コアは一体この部屋の何処にあるのだろうか?
周囲を見渡したがそれらしい物は無かった。
「私は力になれそうに無いですね。奥様が倒した魔物の解体をしております。何かあったら声を掛けて下さいませ。」
できる事が無くて暇なのはわかるけど・・・なんで解体?
まぁ、放っておこう。
しばらくして、使用人の女性が僕に声を掛けて来た。
「マナミ様、蛇の魔物の中に変なものが・・・」
使用人が取り出したのは魔石とは違う何かだった。
アリシアの話だと破壊は出来るようだけど・・・。
何かに使えそうだから欲しいかな?
そう思ってコマンドの中に入れてみる事にした。
手元からダンジョンコアが消えたのを確認し持ち物欄を確認する。
持ち物
自家製ポーション×20
魔力回復薬×30
普通自動車運転免許証(MT)(レプリカ)
通帳
印鑑
翡翠色の魔石
迷宮のダンジョンコア
よし、上手くいった。
コアは破壊はしていないのでダンジョンのままかどうかを確認する為に地図を開き開かない扉を軽く押してみた。
地図にはヨゲンという城の名前と変化しない見取り図が出ており扉の方はしっかり廊下と繋がっていた。
どうやらダンジョンから戻せたようだ。
エンさん達のところに戻るとしますか。
「あの・・・蛇の素材はどうなさいますか?」
どうやら大蛇の解体を終えたようだ。
・・・この使用人の女性は何者なんだろうか?
今日一番で驚いたのは使用人が1人で大蛇を解体したという事だった。




