第5話 ウェスティンの街2 冒険者ギルドー試験ー
「マドリー(婆)さん。昼食はさっき食べたでしょうが・・・あと私の名前はコルトです。」
「はて?そうじゃったかな?んで、何じゃ?」
「このエルフの娘さんの試験官をお願いしたいのですが・・・。」
「珍しいね。普通エルフは魔術ギルドに行くもんだ。」
エルフって魔術ギルドに行くんだ・・・
「あんた、使える魔法は?」
「魔法は初級が少しだけ・・・」
「馬鹿を言っちゃいけないよ。エルフが初級を少しだけ?そんな訳が無い。あんた、幾つなんだい?その歳なら何かしらは1属性の上級魔法を使えるもんさ」
「マドリー(婆)さん。ありえない話ではないですよ。魔族でも使えない方がたまにいるじゃないですか。私は人間ですが・・・」
え?
この強面の人?
というより人間?角生えてるよね?
「そりゃ、あんたが・・・まぁ、いい。
そもそも、魔法使いならコルト、お前が試験官やりゃいいだろ?
私が、やるからには本気でやるよ?いいんかい?」
「私には事務仕事があるのでそんな暇はありません。」とコルトさんは(オリジナルな)笑顔で言った。
ギルド闘技場
「小娘どっからでもかかってきな!それと試験内容は初級魔法を禁止とする。」
あのお婆さん、最初の時と仕事の時は別人だな・・・って実質魔法禁止?
「始めるぞ。小娘。」
僕は杖(どう見ても笛)を出して、殴る事にした。
老婆を得物で殴るのは酷い絵面だが、試験だし向こうが来いというのだから遠慮なくやることにする。
「《物理障壁》」
杖はマドリー婆さんの前で止まっていた。
どんなに力を入れても杖はこれ以上、前に進まない。
頭の中に何かが流れてくる。
中級魔法《物理障壁》が使用可能になりました。
え?何今の?
そんな事を考えているとマドリー婆さんがどこから出したのか解らない剣を握りしめ距離を詰めて来ていた。小柄な老婆が持つには大きすぎる大剣だ。
「小娘ぇ、今、失礼な事考えたね?本気でやるって言ったから攻撃もさせて貰うよ。」
老婆は目の前で、剣を振り下ろす。
僕は咄嗟に先程使用可能になった《物理障壁》させた。
刃が目の前で止まった。
「小娘、初級魔法しか使えないって言わなかったかい?《物理障壁》は中級魔法だよ?」
言いました・・・。嘘はついてないんです。
さっきまで、使えなかったんです。
老婆は一旦距離を取り、
「まぁ、良いさね。物理障壁は魔法を通すし物理攻撃でも障壁の耐久以上の火力で破れる。《四元の弾雨》」
と言って魔法を放った。
四色の光弾が雨のように降り注ぐ。
この世界の魔法は8属性
火、水、雷、土、風、光、闇、無
合成魔法は2属性以上を組み合わせる事で放つ魔法。威力は1属性の時より上がるが、その分制御が難しくなる。
四元という事は4属性なのだろう。
そんなものを受けたらひとたまりもない。
どうやって避けよう・・・そう思った時
『私がなんとかします。』
え?誰?
ここで僕の意識が途切れて、次に僕が見たのは降参した老婆の姿だった。