第62話 試験の意図4
空間の歪みから現れた微笑みの狂戦士はギルドマスターにこう言った。
「端的に言う。あんたが本体で、正体はドラゴンだろ?あのおっさんは鱗だな?」
ギルドマスターは軽く頷き
「よく分かったね。えっと・・・確認するけど、本当にリリアンちゃんだよね?」
と質問を返した。
「ああ、そうだ。」
「なぁ、マナミ。行ったことがなかったり、正確な位置じゃなくても見た景色をイメージすれば空間跳躍できるよな?」
リリアンさんはこちらを向き僕に聞いて来た。
行ったことがないのだからその景色は解るはずがあるわけ・・・あ!
「ギルドマスター、他の2人も同じ空間内にいるんですよね?」
「さあ、どうだろうね?」
「成る程。礼を言うぜ。」
リリアンさんは柔らかい笑顔でギルドマスターにお礼を言った。
「行くぞ、マナミ。」
そう言ってリリアンさんは空間を歪ませてその中へ入っていった。
「リリアンちゃん、話し方もしっかりしていたし、さっき見せた笑顔とか狂戦士じゃないな・・・。後で2つ名を考えてあげなくちゃ。そう思わない?マナミちゃん。」
リリアン達の時もそうであったが、狂戦士と言われているけど話は通じている。
口調と雰囲気は変わってしまっているけど、受付にいる時と変わらない。
「そうですね。その話はまた後でしましょう。」
そう言ってリリアンさんを追いかけた。
空間の歪みから出たらどこかの洞穴だった。
洞穴から出ると先に行ったリリアンさんがおじさんの分身と闘っていた。
「オラオラ!セクハラオヤジは消えろ!」
・・・さっきの柔らかい笑顔は何だったのだろうか?
「ん?どうかしたか?マナミ。」
いえ、何も。
「正確な距離はわからないがアリシアのが近いな。」
先ほど水晶玉で見た景色をイメージして
「中距離瞬間移動!」
上手く、アリシアの横に移動できた。自称ギルドマスターのおじさんは近くにいない様だ。
「アリシア、大丈夫ですか?」
「アタイは大丈夫だよ。魔力欠乏寸前のあんたの方が大丈夫か?」
正確な距離がよく分からなかったので、短距離瞬間移動を使わず、より遠くまで行ける中距離瞬間移動を使ったのでかなり消耗してしまった。
「大丈夫です。回復薬とか奥の手があるので大丈夫です。」
アリシアと会話をしているとおじさんが現れた。
「ほぉー、おじさんの分身を倒してきたか。・・・ってなんでマナちゃんがいるの?おじさん、聞いてないよ?」
僕がここに来るのは想定外の様だった。
「オッさん、ヒデェよな。元から不合格にするつもりの試験だろ?この空間に1人だけ跳ばさないで合流できない様にして、不合格にする。違うか?」
え!?そうなの?
「よく気がついたね。リリアンちゃん。」
本当に意地悪な試験だな。
「・・・ラックちゃんの所に行きなさい。アリシアちゃん、後でおじさんの武器を返してね。」
意図を見抜かれて降参した様だった。
急いでMP回復薬を使い魔力欠乏の状態を回復していると「だっふん!」
と言うおじさんのと言う断末魔が聞こえた。
そっちの方を見るとリリアンさんとアリシアが笑顔でおじさんを殴っていた。
・・・僕は何も見てないし、僕は悪くない。
「ここから3、4キロか。そこにかなり強い魔力反応が2つ。」
ありがとう、アリシア。
正確な距離が分かったので中距離瞬間移動を使いラックさんの近くに跳んだ。
「え!?どうやってここに・・・。ギルドマスターは何をやってるんですか?」
秘書の女性が言ってるのは、おじさんの方と本体のどっちなのだろうか?
「お待たせしました。」
「遅いですよ、マナミさん。」
さて、試験を終わりにしよう。




