第57話 皇都の冒険者ギルド
「クレル、調査団の方々を城に連れてってくれ。俺と教授は色々、手続きしなきゃならんしな。護衛は大丈夫だ。用が済んだら城に行っててくれ。」
「悪いんだが、マナミの嬢ちゃん、アリシアを頼む。」
男2人で街中に行くということは・・・
「違うからな!」
「妻一筋です!」
・・・かなり怒られた。
「冒険者ギルドに行きませんか?」
更に仕事をしたいんですか?ラックさん。
「違いますよ。アリシアの事です。先程の身のこなしといい回復魔法の腕といい盗賊にしておくのがもったいないですから。」
アリシアはそれで納得するのだろうか?
「食うに困らないなら何でもするさ。」
意外に寛容的ですね。
でも、何でもは駄目かな。
ん?今何でもするっての流れになりかねないし。
僕たちがギルドに入るとギルド内はざわついていた。
「中々可愛くて強そうなエルフだな。うちのパーティーの構成は女性のみだし誘えるかな?」
「あの2人はやめておけ。アレが【風刃の妖精】とその妹だ。噂が本当なら、姉の方は皇帝の女らしい。」
「人間の女の子、可愛いくないか?」
「おい、彼女はやめとおけ、イースで見かけた事がある。
あの【微笑みの狂戦士】だ。例のイースの惨劇の受付嬢の。」
どうやら、美少女ばかりなのでかなり注目を集めてしまっている様だ。
まぁ、噂の所為で手を出そうなんて人はいないみたいだけど・・・。
「い、いらっしゃいませ。ほんじち、本日はどの様な御、御用件でしょうか?」
この受付の女性、新人さんかな?噛み方がダイナミックだ。
うーん?でも何だろう?この受付の人から何か違和感を感じる。
「この人の冒険者登録とパーティーへの加入の申請をお願いします。」
「あ、私もパーティーに入れて下さい。」
「えっと・・・リリアンさん?いつ冒険者になったんですか?」
「マナミさん達がパーティを作った頃です。ギルド職員から冒険者登録をすると試験なしでCランクから始められるんです。」
「トレジャーさんはこの事を知ってますよね?」
「今頃、驚いてると思います。」
リリアンさんは微笑んでそう言っているけど・・・何だか、イースのギルマスが可哀想になってきた。
「それでは先に登録の方からさせて頂きます。
登録料は銀貨1枚となります。」
3人とも僕の方を見ている。
「なぜ、見てるんですか?」
「アタイは無一文だから借りたい。というより下さい。」
「パーティーの資金管理をしてるのはマナミさんなので。」
「パーティの経費でお願いします。」
わかりましたよ・・・。
腰につけている袋から(袋の中身はからなので領域外の為替で)銀貨を一枚取り出して受付嬢に渡した。
「では、こちらの内容を確認してから、ここにサインをお願いします。代筆致しますか?追加で銀貨1枚かかりますが?」
「字ぐらい自分で書ける。」
そりゃ、元々貴族の娘だから、それ位は出来るよね。
というより自分で書いてください。
「確認しますね。【友情の船】は現在4名ですね。先程、加入致しました、アリシア様、リリアン・ハント様。それにマナミ・マナミ様、そしてリーダーのブラック・ネーム様!!」
受付の女性から笑顔が消えていく。
「ブラ、ブラック・ネーム様、冒険者であらせられたんですね。ギ、ギルドマスターをお呼び致します。少々お待ち下さい。」
そう言って受付は奥の方に行ってしまった。
「ビビり過ぎだ。このエルフが何者であろうとも受付嬢であるなら涼しげな顔をしてやり切る事だ。隣の狂戦士を見習え!」
アリシアは溜息をつきながらボヤいていた。
「狂戦士って誰の事ですか?」
さぁ、誰の事でしょうね・・・。
数分後、ももひきに腹巻といった異様な格好をした、おじさんが登場した。
「なんだ、お前はってか?そうです、私がギルドマスターです。」
色々まずいのが出てきた・・・。
イースの街の冒険者ギルド
「そういえばリリアンは、うちの所属は128名って言ってたな。負傷したのは126名。確かに登録名簿と符合している。残りの2人の内1人は俺だが、あと1人は誰だ?」
彼はそう言って資料を次のページへと送っていた。
最後のページになった時に彼は目を見開いた。
そこには自分の娘の名前があったからである。
「いつの間に!?・・・。見間違えじゃないな・・・。ウィズになんて説明しようか・・・。」
この後、彼が妻に怒られたのはいうまでも無い。




