第56話 ステータス(自己申告)
「それは、皇帝陛下が勝手に居なくなったもんだから仕事がなくてな。そんな折に友人が婚約者を連れて帰ってくるって、とある爺さんから連絡があったんでな。だからこそ俺たちが門番の仕事をする事にしたんだよ。」
主君を馬鹿呼ばわり出来ると言う事は互いに信頼しているのだろう。
「それは悪い事をしちまったな。・・・近衛の仕事とは関係ないだろうがコイツらを頼みたい。警邏隊の方に引き渡してくれ。罪状は窃盗で。」
そう言って盗賊達の方を向いた。
「はいよ、そんじゃ、女の子達と友人の方は任せる。頼んだぞ、クレル。」
「はいはい、似非侍。」
クレルと呼ばれた女騎士は僕たちの方に歩いてきた。
「それで、そちらのお嬢さんは?」
女騎士が盗賊姫ことアリシアに気がついた。
「・・・攫ってきた高貴な人の娘だ。」
捕まっている盗賊の男達は皆そう言った。
実際のところ彼女の正体は高貴な人の娘なので間違ってはいない。
「お前たち・・・。」
この人の性格からして部下を見捨てないだろうな。
「アタイはコイツらの親玉だ。名前はアリシア。この国にも手配書が広まってんだろ?調べりゃわかる筈だ。」
やっぱりね。
「お頭・・・」
手下の男どもは泣き出す者までいた。
盗賊姫は男前だった。見た目が童女だけど。
「そこのエルフ、失礼な事を考えてないか?」
いいえ、考えてないです。
それで、エンさん。彼女はどうするんですか?
「こっちのお頭は訳ありでな・・・あとで詳しく話す。だから今は警邏隊に引き渡せない。そこは解ってくれ、フジ。クレルもだ。」
「はいよ。いや・・・承知仕った。親方様。」
この似非侍さんは仕事中は侍っぽくなるようだ。
「承知いたしました。陛下。」
「やっぱり皇帝じゃないか!」
盗賊達は大声で叫んでいた。
盗賊の男達が侍の男に連れていかれた後、女騎士のクレルは女性陣の身元確認をしていた。
リリアンさんとラックさん、それに調査隊の数名は先程チェックしたので後は、僕を含めた数名だけだ。
「調査隊の方に不審な点はないですね。それと盗賊のお頭、アリシアの事は後で陛下に確認を取ります。」
ステータスを見る事でアリシアが何者かという事を知ったな・・・。
「マナミさんでしたっけ?貴女のステータスが見えなかったんだけど・・・。貴女は何者なの?」
自分の正体を話していいのだろうか。
僕が転生者である事、この身体が人形だという事、そもそもエルフでは無い事。
僕が困っているとエンさんが女騎士にこう言った。
「あー、そこのマナミの嬢ちゃんなんだが、義妹だ。」
「陛下、何をおっしゃられてるんですか?」
確かに対外的にはラックさんの妹にはなってますけど・・・。
「俺の婚約者は知ってるな?彼女の妹なんだよ。容姿が似てるだろ?」
エンさんと話している女騎士は何かを察したようで、
「・・・そういう事にしておくわ。貸しにしておくからね。ステータスは自己申告でお願い。一応書類を作らなきゃいけないから。」
と言った。
「クレル、いつもワリィな。マナミの嬢ちゃん、これに書き込んでくれ。」
と言って羊皮紙を僕に投げた。
ステータスを確認してエンさんに渡された羊皮紙に書き込んでいく。
マナミ・クロセ
LV.1
最大HP45
最大MP235
攻撃力6
防御力6
魔力 250
賢さ128
固有スキル
大文字化け
・言語理解
・ステータス鑑定無効
と簡単に記した。
エンさんの部下とはいえ、手の内は知られたくないので一部(殆ど)を記載しない事にした。
不自然な点はないだろう。
「成る程。言語理解とステータス鑑定を無効にする複合型の固有スキルか。それなら私の鑑定を無効にしてるのも理解が出来るし、今回の遺跡調査向きの言語理解があるから陛下が雇ったのですね。」
「そんな所だ。レベルやステータスは低いから戦闘向きではないがそこらの学者より頭が回る。教授もその辺りで動向させるのを決めたそうだ。」
ナイスフォローですよ。エンさん。
(腑に落ちないところはあるけど・・・)
「という事にしておきます。今度、手合わせをお願いしますね。【固有魔導書】のマナミさん。」
あれ?バレてる?
「イースの街から皇都に帰ってきた冒険者が話してましたので。イースの街の冒険者ギルドに出入りしている2人のエルフがかなり凄いと。」
どうやら僕たちに絡んできた冒険者の中に皇都のギルド所属が居たようだ。
「リリアンさん?」
「何でしょう?」
「あの時、他の街の所属の冒険者ってどの位いました?」
「60人くらいでしたね。」
「ちなみにイースの所属は?」
「128名です。ギルドマスターと一名を除いて全員を御二人で退けましたよ・・・。」
僕とラックさんは、知らないうちにやらかしていたようだ




