第55話 アールツーの門前
「アイツらの怪我を治してやりたい。大人しくする様にアタイから言い聞かせるからやらせてくれ。」
主に顔の損傷が酷い人が多数、早急に治療しなくてはならない者も多数。
今、何があったのかを知らない人が彼らの顔を見たら必要に顔だけを狙う魔物と鉢合わせたとしか思わないだろう。
(ギルドでそう言う魔物がいる事を知りました。)
「どうしますか?依頼主?」
独断で決めて皆を危険に晒する訳にいかないので確認をとる。
「俺らの中に回復持ちはいないからな・・・。やらせてやれ。」
「ありがとよ。」
そう言うとアリシアは手下の男達の所まで駆け寄り回復魔法を使い始めた。
手口の中に催眠魔法と回復魔法を使うと記されていたけど、本当に回復魔法が使えるのか。
「何か、失礼な事を考えてないか?」
「いいえ、何も。」
どう見ても童女が大人に『痛いの痛いの飛んでけ〜』
をしてるだなんて思ってませんよ?
その後、僕たちは何事もなく皇都アールツーに到着した。
皇都の門には侍風の男と女騎士が居た。
何故、着流しとビキニアーマー姿の人が・・・?
ミスマッチじゃ・・・。
よく見ると門の左半分が洋風、右半分が和風となっている。
こんな歪な建造物、どうやって建てたんだろうか?
「固有魔法だな。」と盗賊姫がボソリと言った。
犯罪者として捕まってる状態なのに自由だな・・・この人は。
「そこの女子連れの御仁、しばし待たれよ!」
「身元確認をさせてもらう。女性は私が見させて頂こう。」
「何故、お前らが?それより、いつになくチェックが厳しくないか?」
ふーん、いつもより厳しいのか。
それより、エンさんは困惑しているけど・・・どうしてだろうか?
「今、都では皇帝陛下の婚約者である、ブラック・ネームを騙る不届き者がいる故に、厳戒態勢になってるでござる。」
へー、公にしてない筈なんだけど、噂になってるのか。
「私がブラック・ネームです。」
「へぇ、貴女がね。それでは失礼致します。」
そう言って、女騎士がラックさんに近づき手を握った。
「皮膚接触による鑑定魔法ですね。魔導師でもこの魔法を覚える人が少ないのによく覚えましたね。うちのギルドでも取り入れようか悩んでる所です。」
解説ありがとうございます。リリアンさん。
「はい、終わりました。本物のブラック・ネームさんですね。・・・必ず守り通しなさいよ、ドット。」
「そうだぞ?玉の輿を狙って陛下を篭絡しようとしていた連中は怒り狂ってたしな。」
侍の人は苦笑いになっている。
あれ?
「あの・・・侍の方の口調・・・」
「あー、それっぽく見える様にって転生者の皆さんにやらされているだけっすよ。」
あ、侍の人キャラ作ってたんですね。
「おい、お前ら近衛の仕事はどうしたんだ?」
この人達は近衛なんだ。
「そちらのお嬢さんは?」
「さっき確認したけど、その娘【微笑みの狂戦士】よ?手を出すなら色々、考えてからにしなさい。(いい女なら、すぐそばにいるのに・・・)」
騎士のお姉さんの表情は少しむすっとしていた。




