第53話 微笑みの狂戦士
「テメーら今何って言った?」
「聞こえなかったのか?女どもは置いていけって言ったんだよ。」
「違う。もう少し前だ。」
「あーあ、エルフが2匹か?」
この国は隣にいる人の意向で人種差別を禁止している。
「取り敢えず殴らせろ!」
エンさんは背負っている大剣を抜かずに殴るつもりの様だ。
「そいつらもおっさん達より俺たちの方が良いっ・・・ブヘ!」
そう言った男は吹き飛んでいた。
「下衆野郎はまだ居るのか?」
やったのはエンさんではなく、リリアンさんだった。
え?リリアンさん、口調が変わってないですか?
「やったな!このアマ。捕まえて色々楽しんべバブ」
リリアンさんが下衆な発言をする男を殴り飛ばした。
「あと何人だ?」
と言ってリリアンさんは微笑んで入る。
あれ、リリアンさんのやっぱり口調が変わってる?
「ぶべ!」
「ゴハッ?」
「グヘ・・・ありがとうございます!」
「グハッ・・・」
盗賊の男達は物理的に吹き飛ばされて次々と倒れていった。
途中変なのが混ざってなかった様な気がしたのは気のせいだと思いたい。
これが【微笑みの狂戦士】なのか。
普段はお淑やかな受付嬢のイメージだったけど、今の彼女を見てるとヤンキーにしか見えない。
エンさんはどうしてるかって?
リリアンさんが最初の人を殴り飛ばしてから呆然としてました。
いつのまにか盗賊の男達が全滅している。
それにしても容赦ないな、リリアンさん・・・。
これからはリリアンさんを怒らせない様にしよう。
「そうですね。調査が終わるまでダーリンって呼ぶのやめておきます。」
ラックさんも同じことを思ったみたいだ。
「よくも部下ど・・・ギャー!」
リリアンさんは盗賊の頭らしき女の子の腕を折った。
「女の子だから顔は勘弁してやったけど、次は足の骨を折ってやろうか?」
もうそろそろ止めよう。
幾ら何でも腕の骨が折れている相手に言う台詞ではない。(折ったのはリリアンさんなんだけど・・・)
「『重力の檻』」
「動けねー!味方に何すんだ!マナミ!」
「落ち着いて下さい、リリアンさん。盗賊は撃退しましたから。」
「わかったよ・・・。」
と言って彼女は倒れた。
盗賊達の手脚を魔力で作った縄で縛り上げて皇都まで、連れて行くことにした。
普通は連行せずにその場で全滅させるらしいのだがこの国のトップが殺さずに連れて帰ると言いだしたからのでそうすることにした。
「くっ、殺せ・・・。」
「いや、殺さねーよ。お前ら全員、皇都で裁判にかける。手首を縛ったり辛いとは思うが、暫くは我慢してくれ。」
「まさか、体が目当てか?」
「童女に興味ねーよ。」
婚約者の見た目が少女ですから説得力ないですよ、エンさん。
「言っておくが、お前よりは歳上だぞ?多分・・・。」
え?エンさんより歳上?
「彼女、人と長命種族のハーフですね。普通のハーフは人族換算だと見た目通りのはずです。多分ですけど、長命種族の血が濃いんでしょうね。」
倒れていたリリアンさんが起き上がった。
「私は何でここで倒れているんですか?
確か盗賊に襲われて・・・!盗賊はどうしたんですか?私慰み者になっちゃ・・・あれ?全員捕まってる?何で?」
どうやら、【微笑みの狂戦士】としての記憶は今の彼女にはない様だ。
「昔、冒険者ギルドを壊滅寸前まで追いやったって聞いたんですけど・・・」
「私がですか?まさか〜。私は只の受付嬢ですよ?確かに皆さん私の知らない間に大怪我をしてましたけど・・・あれ?どうして怪我をしたんだっけ?」
あ〜成る程。彼女はこのタイプなのか・・・。




