第46話 交渉成立
今は姉である妖精さんに言った。
「途中までは良かったけど・・・照れくさくても、もう少しはっきりという事が大事かな?」
この国の偉い人に言った。
「指輪入りの小箱を渡したい相手は目の前にいるあの娘でしょう?ヘタレてないでさっさと渡したらどうですか?」
痴話喧嘩中の2人にそれぞれ耳打ちをした。
2人とも顔を赤らめている。
初心過ぎんだろ・・・見ててこっちが恥ずかしい。
こっそりスキルを使い収納に角砂糖を全て入れた。
「執事さん、お砂糖が少ないので取りに行きたいのですが・・・」
「左様でございますね。マナミ様。先程まで沢山あった筈なのですがね・・・。甘党でしたかな?では取りに行きましょう。」
ニッコリ微笑んでいる。
この執事さん、僕の意図を理解してくれた様だ。
僕らは部屋を出て扉を閉めた。
よし、扉に耳を当てて・・・
「マナミ様、こちらの水晶をお使い下さい。音声も入る魔法具でございます。私も中の様子を知りたいので。それと先程、隠した砂糖はこちらでお預かりいたしましょう。」
この人、言っちゃったよ・・・
大分、本音が漏れてるな・・・。
僕は収納から角砂糖を全て取り出し執事さんに差し出した。
「色々、ありがとうございます。長年、旦那様に仕えておりますが、中々面白・・・浮いた話が無かったので心配をしていましたので。」
今、この人、面白いって言いかけたよね?
僕は執事さんに呆れながら水晶を見た。
「俺から提案があるんだが・・・まずは確認だ。」
「何です?」
「冒険者ブラック・ネームへの追加報酬は指輪でいいんだな?」
「(ちょっと違いますけど)そうです。」
エンさんは小箱を取り出した。
よし行けー!
「良いですぞ!旦那様ー!」
大声出さないでください。見つかります。
「これを前払いで渡したい。その・・・薬指にして欲しい。つまり・・・結婚してくれ!」
よし!よく言った!
「ゴボゴボ、ゴフッ(良いですぞ!)」
また、五月蝿くなりそうだったので、執事さんには〈空気〉で風を操り口の中に〈水〉を入れておきました。
「・・・おい、何で泣いてんだよ?そんなに嫌か?」
あら?ラックさんが泣いている。
余程、プロポーズが嬉しかったのだろうか?
「ち、違います。逆です。」
彼女は慌てて涙を拭いた。
そして、「はい、喜んで。」
と満面の笑みで答えた。
「そうか・・・。」
そう言うと、陛下はラックさんを抱きしめて、口づけをした。
そして、口づけを終えラックさんの左の薬指に指輪を嵌めた。
ラックさんは頬を赤らめた後、しばらくすると鬼のような形相になり、
「マナミさん?居ますよね?魔力探知をしてるので扉の所にいるのはわかってるんですよ?出てきて下さい!」
ヒィ!
怖かった。
一瞬、本気の時のマドリーさんに近づいたのでは?と思ってしまう程・・・。
「勘弁してやれラック。恥ずかしい話、マナミの嬢ちゃんが居なけりゃ、こうならなかったんだから・・・。」
エンさんに窘められてラックさんの顔は再び赤らんでいた。墜ちたな・・・。
「あはは・・・おめでとうございます。」
やっぱり魔力探知されてたのか。さっき魔法を使っちゃたから・・・。」
覗き見したのは悪いとは思います。
でも気になるよね?
そんな感じで誤魔化していると、すぐ横にいた執事さんが僕だけに聞こえるように小声で
「マナミ様・・・どうか、旦那様と奥様をお護り下さい。」と言った。
そう言った執事さんの目はどことなく悲しそうだった。
イースの町の某所
一組の男女が水晶玉を見ていた。
パリンと水晶の球が割れた。
「ちょっと、壊さないで下さいよ!それ、高かったんですけど・・・勇者様?」
勇者と呼ばれた人物は答えた。
「あの雌エルフをどうしてやろうか?あの人は私のモノなのに・・・絶対に許さない・・・。」
「それ、ストーカーでは?程々にして下さいね。勇者様。」
「ふふふ、あははは〜」
本格的に悪意が迫っている事を僕達はまだ知らなかった。
ウェスティンの冒険者ギルド
「コルト!アレを用意しな!」
「アレですか?突然どうしたんです?」
「もうそろそろ、孫娘が男を連れてきそうな気がする。」




