第45話 固有魔法《水》
紅茶を淹れてる時
「何か知りたそうな顔をしておりますね。マナミ様。私に分かる範囲ならお答えしましょう。」
そんな表情をしていないのだけど、この執事さん鋭いな。
「今の僕は古代の人形なのにどうして魔眼が覚醒したんですか?」
いくらこの人が博識だとはいえ、魔眼については流石に一般の執事さんに答えられないだろう。
そう思っていたら・・・
「魔眼は魂の方に依存する故、肉体は関係ない様ですね。身体技能と言うよりはスキルに近い様ですな。私の知る限りでは眼がない魔物が魔眼を持っているという事もあるそうで・・・長く生きておりますがその様な魔物を見た事はないので実際にいるかは私の知るところではありませんが・・・」
答えてくれたよ・・・この執事さん、何者なんだろう?
昨日の夜、ララさん達と飲んだ紅茶を思い浮かべながらティーポットを傾けていた。
すると・・・
「私から質問させて頂きたいのですが・・・」
「はい?」
「水と茶葉がないのにどうやって紅茶を淹れたんす?」
しまった!無意識に固有魔法の《水》で紅茶を淹れてしまった。
「成る程。先程の巻物の作製の話ですが、この魔法で行う予定なのですね?」
僕は軽く頷いた。
この執事さんに嘘は効かないと判断した。
そんな気がしたのである。
一応、固有魔法の《水》で何が出来るのかも説明した。
「伝授も含めて広めない方が良いかと思います。下手をすると色々な所が廃業せざるえなくなりますね。」
迂闊だった・・・そこまでは考えてなかった。
「まぁ、魔法の構成が複雑過ぎて、巻物は良いとしても、伝授の場合は大抵の者は魔力やMPが直ぐに切れてしまい使えないと思いますが・・・」
元々、僕らの固有魔法は、ムゲンノマドウソウセイが前提な所もあるし、僕は魔法の初心者で、人に教える事はまだ出来ないので、その心配はないだろう。(理事長に教えると約束してしまったが・・・)
「マナミ様、水を冷たくは出来ますかな?」
軽く頷いて、どんな温度でも調整できますよと答えた。
「では、さらに冷やし続けるとどうなりますかな?」
それは・・・0℃を下回れば凍る。
「氷になります。」
「でしたら、そちらを巻物にしてみては?」
合成魔法でも氷を作れるますよね?
炎属性を闇属性を付与したものに水属性を足す事で出来るらしい。
「合成魔法は、MPや魔力の効率は複数の属性を同時に出すので僅かにコントロールを間違えると爆発が起きたり湯ができたりするので向かないのです。それに巻物にした時はランダムとなります。」
成る程、狙って出せないのか。
その点、僕の固有魔法は任意で氷、水、水蒸気、お湯を作り出す事ができる。形状と温度を設定すれば可能だからだ。
「そもそも、何故、マナミ様は水の魔法で氷を作れるのです?」
水・・・つまり化学式はH2Oだよね?
それなら広い意味では水蒸気も氷も同じだ。
「それは水の化学・・・」
と言いかけた時、執事さんは何かを察した様で
「この世界の知識でなく、別の概念や知識を使っておられるのですな。昔出会った異世界からの来訪者はカガクと言っておりましたな。」
と間髪を入れず返してきた。
成る程。僕は魔法を使っているつもりだったけど化学をしていたと。
納得できない・・・。
執事さんとの雑談を終え、紅茶を淹れ直して執事さんと一緒に、エンさんとラックさんの所へ戻った。
「女の子に言わせる気ですか?指・・・ゴニョゴニョ・・・薬・・・ゴニョゴニョ」
ラックさん、涙目で怒っている?
「だから何だってんだ?何の指輪が欲しいんだ?」
いい加減にしろよ・・・陛下。
あの2人、まだやってるよ・・・。
「左様でございますね。プッ・・・」
この後、僕がどちらにもアドバイスをしたのは言うまでもない。




