第44話 エルフの回想 (後編)
イースの町中に影の狼の群れが出た。
町の人々を逃さなくては!
マナミさんは怯えてしまっている。
事もあろうか、自分だけ逃げると言い出した。
人を見捨て逃げようとするなんて、見損ないました。
なら、私に身体を返してください!
私は自分が使える中で最大の魔法、風のエルフを使い狼を倒していく。
後、数匹というところでMPが尽きてしまい元の姿に戻ってしまった。
また同じ事をしてしまった・・・。
でも前とは違う。
今は、マナミさんもいる。
私が判断を誤った所為でマナミさんも道連れに・・・
ごめんなさい・・・。
そう呟いていたら残りの狼が一斉に私を目掛けて
襲いかかってきた。
もう駄目だと思った時、1人の男性が飛び込んで来た。
「他の国々で調べものして故国に帰って来たら何で町中に影の狼が出現してんだよ?」
「・・・知りませんよ。」
その男性はマナミさん(と私)に嘘を付いた人。
なんで私達を助けたんですか?
「いついかなる時でも冒険者たる者冷静であれだ。マナミ・クロセ。いや、今は違うみたいだな。」
やっぱり最初に会った時に私に気付いてたのか。
・・・そうですね。私の判断で2人とも死ぬところでしたから・・・
「貴方には会いたくなかったです。」
今の情けない姿を見られたくないという思いから出た言葉だった。
本音はお礼を言いたかった。
安心したら意識を失ってしまった。
意識を取り戻したのは寮の部屋の中だった。
その際マナミさんと仲直りした。
次の日、ギルドに行き成り行きでギルドマスターとの面会。
「なら権利はアンタにあるな。影の狼の亡骸なんだが、親切な御仁がギルドに持ち込んでな、【風刃の妖精】マナミ・クロセと言う冒険者に権利があると言って帰ったそうだ。」
わざわざ、私達の為に素材を持って来たんですね。オマケに二つ名まで・・・。
新人の冒険者は二つ名を持っていない。
大抵の場合は依頼をこなしている内に人々から呼ばれる様になる呼称だからだ。
「多分、あの人ですね。見つけ次第お礼をしましょう☆」
あの人に二つ名を付けて貰ったのが嬉しかった。
ちゃんとお礼を言いたかった。
2つの指名依頼の依頼書を受け取ってギルドを出ようとしたら
「エルフのお嬢さん。見ない顔だね?新人さんだろ?もし、君さえ良ければ僕のパーティと一緒にクエストに行かないか?」
と声を掛けられた。
嫌な感じのする人間の青年だった。
彼以外は女性だけでパーティーを組んでいる。
よく見ると全員目が虚ろだ。
催眠や魅了、誘惑にかかっているのだろう。
「しばきますか。」
マナミさんと意見が一致した。
そうしたら固有スキルが強化されていた。
固有魔法を創れるみたいだ。
マナミさんと固有スキルを駆使して、襲いかかってくる冒険者達を退け、元凶を蹴り上げた時にふと思った。
何で、私達に魅了が効かなかったのか?と。
別に耐性スキルがあれば防げる。
けれど、2人ともそのスキルを持ってはいない。
その答えはのちに知る事になる。
その後、薬を作ったり、あの人のところへ行き報酬を貰った。
「夜道は危ないから送っていく。」
そう、あの人に言われて嬉しかった。
でも、断った。あの人の服から小箱が見えた。
マナミさんに渡すつもりなのだろうか?
そんな事させたくない。
あれ?何でこんな事を思うのだろう?
マナミさんはあの人の事をどう思ってるのだろう?
「マナミさんはあの人をどう思いますか?」
「エンさんの事?近所のお兄さんかな?突然どうしたの?まさか・・・」
・・・いや、違います。
「へぇ〜。助けられてた時に?お姉さん応援するよ?」
だから違います。
「はいはい。明日からちゃんと学校に行って頑張んないと。おやすみ、ラックさん。」
マナミさん。何か忘れてません?
「な、何のことでしょうか?」
寝る前の修行ですよ?
そう言ってマナミさんが気絶するまで修行をつけた。
こうして私は人間の友達を得て人間に恋をしたのである。
「指・・・・ゴニョゴニョ」
「だから何の指輪だよ?」
「まだやってるよ・・・。」
「左様でございますな。プッ・・・」




