第43話 エルフの回想 (前編)
幼い頃に聞いた御伽噺。
勇者が攫われたお姫様を助けに行く話。
王様は民を集め姫を助けた者には報酬を出すと言った。
主人公は仲間を得て姫を助け出し、最後は龍の魔王を倒してハッピーエンド。
・・・とはならい。
姫の父親は勇者に約束を守らず褒美を与えず、彼を追放。
あろう事か彼が魔王だと喧伝したのだった。
身も心も疲れた勇者は自決をしてしまう。
という話。
この物語を聞いて幼いながらに人とは心が醜くい生き物だと感じた。
しかし、お祖父ちゃんは
「それは人が持つ一面じゃ。人を愛するエルフもおるしの。まぁ、その場合、相手は寿命が短い。お主も人を愛する様になるなら大切にしなさい。」
と言った。
そんな事は無いと思っていた。
人とは仲良くなれそうにない。
私は影の狼に襲われて暫く意識がなかった。
気がついたら、私の身体にはマナミという人族の魂が入り込んでいた。
人は醜い心を持っている。
この人は私が意識を取り戻したら私を消しに来るだろう。
そう思っていた。
だけど違った。
憧れの冒険者の試験の際、
彼女が私の身体を気遣いながら傷一つ付けずにお祖母ちゃんと戦う姿を見て考えが少し変わった。
だからこそ、お祖母ちゃんが放った《四元の弾雨》を防ぐと決めた。
マナミさんは時々、嘘を吐くのだが、他人を不幸にしているわけでは無い。
むしろ私を含め他人を助けるために嘘を付いている。
こういう嘘もあるのかと感じた。
次に関わった人間はコ何とかさん。
昔、お祖父ちゃんが冒険者だった頃、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんと同じパーティにいたツノの生えた人。
お祖母ちゃんの秘書をしている辺り悪い人では無いのだろう。
問題は森で出会ったの胡散臭いオジさん。
出会いは嘘だらけだった。
ボロのローブを着ているが、素材はAランクの魔物の物。
コレを入手できるのは金持ちの貴族か討伐できるだけの腕があるか。
この人は多分、両方だと感じた。
上手く隠蔽されてしまい探れないけど、魔力や気配が祖父母やコなんとかさんに近い。
着ている服も一見ボロだけど、素材は上質なもので腰に付けた袋は3つある。
金、銀、銅貨で分けているのだろう。
それもかなり入っている。
なのにマナミさんに対して持ち合わせが無いと言った。
後でマナミさんと会話して判るが、名前も偽名。
帝国領に入る前にマナミさんがいた世界でエンシュウリツという言葉があり、これが3.14という数字だと教えてもらった。彼が皇帝、ワンフォー・スリードットではないかという事も・・・。
簡単に嘘を吐く、この人を好きになれないと思っていたのに・・・。




