第42話 素直になったら?
「何でそうなるんですか!マナミさんからも何か言ってやってください!マナミさん?」
「だからはっきり言ってくれ。どんな指輪が欲しいんだ?ん?どうした?マナミの嬢ちゃん?」
僕はハッとして2人を見た。
2人には未来(?)が視えたとだけ言った。
「エルフは魔眼を覚醒する筈がないんです。エルフはレベルが低いうちから魔力が高くなりやすいから覚醒するにしても条件が・・・あ、マナミさんならあり得るかも・・・。」
マナミさんならは万能じゃないんですよ。
まぁ、僕はエルフにしては魔力が低いけど・・・
「エルフで魔眼を覚醒させるとはな・・・あ、そうか元は人だよな。それならあり得るか。もしそれが、未来視の魔眼だと、これから先、厄介だぞ?
分岐点で取った選択肢次第で世界滅亡なんって事もある。俺も何回かやらかしかけたからな。それで一体、何を視たんだ?」
映像では世界が滅亡してるんですが・・・
だからエンさんは極力干渉しないのか。
尚更、当事者である2人に言うわけにはいかない。
そう思い僕は首を横に振った。
「そうか、言えないか。
何を見たか解らんが、初めての未来視は世界で一番愛する人の死を見ることになるんだよな・・・。」
僕の未来視はそうじゃない・・・よね?
目の前の男性をそういう風には見ていない。近所のお兄ちゃんくらいかな?
「貴方は誰を見たんですか?」
「言うわけないだろ?」
「言えない相手なんですか?」
ラックさんはエンさんに詰め寄った。
これでも彼女の思いはエンさんに伝わらないのか・・・。
「プッ・・・失礼。そこまでにして頂けますか?ブラック様。プッ・・・。失礼。旦那様も・・・プッ・・・。」
執事さんがここで介入した。
笑いを必死に堪えて・・・はいない。
この人の反応からすると陛下が見たのは人物・・・。
それにしてもラックさんは陛下に対して最初に比べてデレてきてるな。
「あ、嬢ちゃん。これから先、何か視ても当事者には話したら駄目だぞ?予知した流れが変わってしまうかもしれないからな。それこそ世界滅亡の流れとかありえる。」
やっぱり思った通り当事者に話てはいけないのか。
ラックさんは再びエンさんに詰め寄っている。
「それで追加報酬の指輪は頂けるんですか?薬・・ゴニョゴニョ」
「薬?薬なんて名前の魔法の指輪はないぞ?あー、薬売りの証の指輪か。そういえば回復薬を作れるもんな。」
「違います!だ・か・ら何でそうなるんですか?」
2人が再び痴話喧嘩を始めると執事さんが僕に近づいてきた。
「我々は紅茶でも淹れに行きますか。マナミ様。」
「そうですね。お邪魔みたいですし・・・。
片方はさっさと小箱を出してプロポーズをして、片方は素直に薬指に指輪が欲しいって言えばいいのに・・・。」
「その通りです。まぁ、坊ちゃ・・・旦那様に緑炎様と笛の妖精様を敵に回す覚悟がお有りかは別ですが・・・」
遊んでるな・・・この執事さん。
見た目は気品のある老紳士なんだけどな・・・。
2人きりならラックさんも陛下も素直になるだろう。
何日後にあの未来が来るかわからないが、どうにかして、この幸せそうな2人を守らなくては・・・。
マナミは、そう決意するのだった。




