第41話 眼覚めは突然に
次の日の放課後
僕らは皇帝陛下の屋敷で紅茶を飲みながら仕事の話をしている。
「今回、俺も調査隊に加わる。古代文字が少し読めるからと同行を希望した。依頼内容は調査隊の護衛。俺の優先はしなくていい。」
別の指名依頼も受けるので二重取りでは?
「そこを気にするか。そうかもな、強いて言うならウィズの姐さんが損してるのか。」
「そうですね。私から一度、理事長にお話しておきます。」
「まぁ、それはひとまず置いといて報酬は1日につき1人金貨2枚でどうだ?それと、他に欲しいものがあれば用意するが・・・。」
「巻物を作ってみたいので僕の報酬は羊皮紙等の紙を下さい。」
一晩考えて試作してみたいという気持ちが強くなった。
「固有魔法の巻物でひと山当てるのか?戦時利用されない様に気を付けろよ?」
そんなんじゃないです。
まぁ、非殺傷設定はしておかなきゃ駄目だよね。
「風のエルフは何が欲しいんだ?」
ラックさんには、この前来た時にチラッと見えた小箱出したら?と、思った。
今のラックさんなら指輪を出されて嫌がらないだろうし、なんて思っていたら
「そうですね。私は指輪が欲しいです。」
ラックさん!?
上目遣いでお願いするとは・・・。
しかしエンさんは、
「循環の指輪か?それとも増幅の指輪か?」
え・・・
いや、何で?
何でそこで魔法の指輪の話になるの?
後ろの執事さん、吹き出しそうなのを堪えてますよ?
女の子が、指輪を下さいって言ったらそれはね・・・。
ラックさんは少し涙目になりながら
「こ、こん・・ゴニョゴニョ、けっ・・・」
珍しく恋する乙女になってます。
「こん?混沌の指輪か?けっこ?血行の指輪か?」
・・・鈍感なの?
血行の指輪って何?血の巡りが良くなるの?
後ろにいる執事さん、吹き出しちゃってるよ・・・。
僕は呆れつつも良い感じ(?)のラックさんと陛下を微笑みながら温かい目で見ていたら変な映像が流れてきた。
『あははは〜♪これであの目障りなエルフは死ぬ!これで彼は私のもの♪あははは〜』
誰かの悪意のある攻撃が1人のエルフの女性をめがけて飛んでいく。
しかし、その攻撃はエルフの女性の前で止まった。
『ぐっ、やっぱこうなるのか・・・』
人族の男性がエルフの前に出て代わりにその攻撃を受けた。どう見ても致命傷だ。
『俺の事は忘れろラ・・・・・そ・と・だ・・をうら・なよ・・・。』
そう言うと男はエルフの腕の中で事切れていた。
『何で?・・・どうして?私の為に・・・彼が・死・・うわぁー!』
愛する者を殺された彼女は怒りに支配されていた。
『固有スキル◼︎◼︎◼︎ノ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!我が命により全て滅びよ!』
1人のエルフが使った魔法で世界は光に包まれた。
ここで映像が終わった。
!?
何これ・・・
世界が滅亡する未来(?)が視えてしまった。
エルフの女性の代わりに致命傷を負った人間の男性と愛する人を失い固有スキルを使い、自分の命と引き換えに世界を滅ぼす魔法を作り出し、行使したエルフの女性・・・。
謎の映像に出てくる2人は今、目の前で痴話喧嘩をしている2人だった。




