第40話 巻物と魔法陣
ララさんとリリさんと別れて僕たちは寮の自室に戻って来た。
今日、色々な人と会話をした中で何度か耳にした単語があり、それについて気になったのでラックさんに聞いてみる事にした。
「巻物について教えて欲しいんだけど・・・」
そう、巻物。
魔導書についてはエルフィアにいた時に聞いた。
魔法を覚える為の高価な本。
紙自体が希少価値の高い物のようなので仕方がないらしいけど・・・。
「巻物ですね。紙に魔法陣を書き込んで魔法を使えるようにするんです。今朝、ウィズさんからお借りした、魔法陣入門に詳しく書いてあります。」
魔法初心者の僕にウィズさんが最初の授業に必要な事が書かれているからと言って、数冊の本を貸してくれた。
え?魔法陣と思いながら
僕は目次を見て《魔法陣と巻物》の頁を開いた。
そこにはこう書かれていた。
巻物とは紙に魔法陣を描き込み開いた時に魔法が発動する魔道具である。
巻物を作る上で紙の大きさは重要。
小さいと描き込めない場合があるので極力大きいものを使う事。(ただし、持ち運べる大きさ)
紙の材質は問いません。
作り方
最初は属性を指定する。
属性毎に文字は決まっており、火、水、雷、風、土、闇、光、無の8種類。
次に、その魔法の名前。
この2つをしっかり陣の中に納めるように描く事が重要となって来ます。
(ただし、固有魔法はこの例から漏れ、その使い手毎に魔法陣を描く事になる。)
仕上げは紙を巻き、魔力を込めます。
尚、巻物は一度使用すると消滅します。
これだけ簡単に作れるのに何で巻物が出回ってないのだろう?
「巻物出回らないのは、初級は簡単に使えるので作る必要がありませんし、中級、上級魔法と文字数が増えていきますから描きにくいんです。そもそも、魔導師が自分で使える魔法を巻物にする人なんていませんよ。特に固有魔法はそうです。手の内を晒すのですから。」
巻物を見ないのはそういう事なのか。
それと魔法陣の本を読んでいたら、固有魔法の魔法陣に興味が湧いた。
(入門なので勿論、固有魔法の魔法陣については書かれていない。)
ウィズさんかララさんに聞いてみようかな?
固有魔法の巻物を見た事がありそうだったし。
「固有魔法の魔法陣ですか?ララさんが言ってたように《水》の巻物でひと山当てるつもりですか?」
そんなつもりはないです。
この世界の人たちの生活が便利になったらと思っただけです。
「そうですか。・・・マナミさんの固有魔法は魔法陣に出来るのかという疑問があるんです。」
どういう事?
「例えば・・・お祖母ちゃんの《緑炎》、緑色の炎で燃やす対象を選択という2つの工程があります。なので、〈緑色の炎〉と〈燃やす対象〉を魔法陣に描けば完成すると思います。説明だと簡単そうですが、かなり難しい筈です。」
「マナミさんの《火炎》の場合、色と燃やす対象、さらに〈温度〉と〈形〉が加わり、より複雑になります。」
成る程。
工程が増えれば増えるほど難しくなるのか。
そういう意味では僕の魔法はどれも巻物や魔法陣、向きではないのだと感じた。
「僕が使える固有魔法は全部使えるよね?ラックさん的には大丈夫なの?巻物の事。」
「私も人々の生活が豊かになればと思っていますので気にしてません。」




