第37話 2人のエルフとハント一家
理事長
「それで何をやらかしたの?」
といい笑顔で僕らに問いかけるこの学校の理事長。
「いえ・・・何も・・・」
「私たちは普通にしてただけです。」
「マグ導師が、『いかにエルフといえどもあんなに固有魔法を使えるとは恐れ入った』と報告に来たわよ?それでどんな固有魔法?」
実にいい笑顔。だけどこの笑顔は怖い。
後ろに虎やら鬼やらが見える(気がする。)
「私は1つしか使ってないです。殆どマナミさんがやりました。」
あ、ひどい。
確かにお姉ちゃんは《雷電》しか使ってないけど・・・。(絆融合なる固有魔法はないのでノーカン)
僕は《水》《空気》《雷電》《土壌》《光線》の魔法について理事長に説明した。
「成る程。《光線》のカシコーセンとかセキガイセンとか時々意味は解らなかったけど・・・
基本の魔法に明確な条件を付けるのね。
《水》の味ね。
魔法使いは魔法を攻撃に使うからそんな事、考えた事無かったわ。それなら料理に使えそうね。今度教えて貰える?」
ん?今なんと?
教える?固有魔法を教える?
「え?出来るんですか?」
「え?マナミさん、できないと思ってたんですか?」
お姉ちゃん説明は先にして下さい!
「ラックちゃんの言う通りよ。しっかり、その魔法の理や仕組みを理解する必要があるから習得まで長い時間がかかったり、オリジナルより劣化した魔法が出来上がってしまう場合もあるけどね。それに巻物も作れるわよ。そんな事する人居ないけどね。」
へぇー、そうなんだ。今度、お祖母ちゃんに《緑炎》を習ってみようかな?
「それともう一つ。レキシスキー教授・・・名前はジェームスね。
古代の遺跡と魔法の教授よ。その教授が1週間ほどの休暇届けを出してきて、遺跡調査に行きたいって言ってきたのよ。
それと、あの偏屈な教授が貴方達に遺跡調査へ同行して欲しいって。」
「護衛という名目で冒険者としてなら構いません。」
とお姉ちゃん
お姉ちゃん・・・学校は?
「お金は必要ですよね?」
僕の貯蓄があり・・・
「要りますよね?」
僕の貯金で暫くはどうにでもなるんだけど・・・
自分で稼いでみたいのかな?
「そうね。そういうと思って指名依頼を出しておいたわ。学校側としては、教授の授業の一環として貴方達に同行してもらいます。」
はぁ、初めて登校したのに直ぐに休学になるとは・・・。
それから僕たちはギルドへ行った。
ギルドへ行くと受付が混んでいた。
ただし、リリアンさんの所を除いて・・・。
丁寧な対応なのに何故だろうか?
「こんにちは、マナミさん。そちらの方は?」
「僕の姉の・・・」
「初めまして、ブラック・ネームです。今日、ウェスティンで冒険者になりました。」
「おと・・・ギルドマスターが来たら執務室に来るようにとの事です。」
お父様って言おうしたのかな?
先生にお母さんって言いかける感じで。
執務室
「依頼の方は薬屋の店主とあのお方に聴いて処理しておいた。」
「ありがとうございます。」
なんか本当に申し訳ないです。
トレジャーさんは一度咳払いをし真顔になってからお姉ちゃんの方を向いて
「もう1人のエルフの嬢ちゃん・・・朝自己紹介ができなかったんでな、俺はこの町のギルドマスターのトレジャー・ハンターだ。これから宜しくな。ブラック・ネーム。いや《風刃の妖精》か?」
と言った。
「やっぱりバレてたみたいですね・・・。」
え?やっぱり?
何でバレたんですか?
「どうしてかって・・・レベルだ。
マナミのレベルが1って報告があってな。妙だと思って嫁にそれとなく聞いてみたら当たりだった。」
確かにあれだけの影の狼を狩ったのだ。
けれど、僕のレベルは上がっていない。
それもそうだ。倒したのはラックさんなのだから。
指摘された通りだ。
でもどうやってレベルを見たのだろうか?
「うちのギルドの機密に関わるから詳しくは話せないが、昨日、娘が報告してくれてな。悪いエルフではないから、いざという時に保護しろと。」
へぇ〜娘さんがね。
「そういえばたまに話に出てくる娘さんってどんな方何ですか?」
「お前、さっき会った筈だぞ?」
僕たちが、さっき会ったのは受付嬢の・・・
「リリアン・ハントさんですよね?」
「よく気づいたな。」
「魔力の質ですかね?ウィッチさんに近い感じでしたし。」
気がついてるなら言ってください。
「(昨日の会話で母親は魔法使いの学校の教師、父親は冒険者ギルドの職員だって話してましたよ?まあ、役職については明言されてませんでしたけど・・・。そこからでも確信は得られます。)」
と呆れながら小声で言ってきた。
そうだっけ?
「そうです!」
マナミは案外抜けてる所があると思ったラックであった。




