第33話 双子エルフ(という設定)
イースの町 門の前
・・・俺は夢でも見てるのか?
早朝、エルフの娘がウェスティンに行くと言って町を出た。
学生で授業の開始前までに戻ってくるのだろうとは思っていた。
行く時に俺の目の前から消えたのでそういう感じの魔法が使えるのも何となく察しはつく。
そりゃ、帰って来る時も魔法で目の前に現れるのもわかる。
でもな・・・何で2人に増えてるんだ?
イースに帰ってきた。
勿論、僕が使うとこの後の報告や授業に支障が出てしまうのでラックさんに使って貰った。
「門番さん困惑してますね。」
そりゃ、1人で行ったのに同じ姿の人がもう1人増えてたら驚くだろう。なので、
「幼い頃に僕は養子に出されてまして、育ての親が亡くなってしまったので、故郷のエルフィアに戻り、祖母と話した結果、姉も学校に通いたいとの事で・・・」
という事にする。
「名前が違うのはそういう事情か。複雑な家庭なんだな・・・。しかし、その姉のステータスは教師を凌駕してるんだが・・・。」
しまった!ステータスの偽装は僕だけにしか施せないんだった・・・。
門番さんはかなり怪しんでいる。
どうしようと思っていたら、
「気配が止まったと思ったらここで足止めか。」
聞き覚えのある声がした。すると、そこに3人の人物が現れた。
「朕の客人だ。無下に扱うな。」
「その娘達は|《緑炎》《マドリー様》のお孫さんでうちの学校に通う事になってるのよ。ねぇ?アナタ。」
「ああ、そうだ。うちで預かってる大事な冒険者でもある。」
最初の人は知らない人ですね。(他人のフリ)
2番目の人は後で会いに行く予定でした。
最後の人は何で顔に痣ができてるんですかね?
「昨日、お前にあのお方の指名依頼を受けさせた事がバレてな。学業を優先にしろって・・・。それに娘にもキツく言われたよ・・・。」
怒られたのか。
門番は腰を抜かしている。
「こ、ここここ、皇帝陛下!」
門番からやっと出た言葉はこれか。
そりゃ、国家元首がこんな辺境にいるとは思うまい。
「皇帝陛下?誰だそれは?俺はイーストリア帝国の冒険者、エン・シュウリツだ。」
さっき朕とか言ったでしょ・・・。
「うん。やっぱり知らない人ですね。(他人のフリ)知らない人ですしムカつきますから(皇帝殴っても良いですか?マナミさん?)」
ややこしくなるので、ダメです。
何とか門での審査を終えて、町に入る事ができた。
ラックさんは手紙をウィッチさんに差し出した。
「お祖母ちゃんに書いてもらったんですけど・・・」
彼女は手紙に目を通して
「問題ないわ。前の手紙に貴方の事も書いてあったのよ。マナミちゃんが入学する時に手続きしておいたから。それにこの手紙に書かれてる通りならブラックちゃんも教師にしたいくらいだし。」
と言いった。
そして、ギルドマスターの方を向き、
「ねえ、アナタ?マナミちゃん達は手続きとか色々あるから報告は後になるけど大丈夫よね?」
と言った。
「い、いやぁ、マナミの依頼が失敗扱いになるかもしれ・・・」
「大丈夫よね?指名依頼は依頼主が報告しても問題ないのよね?」
ギルドマスターはオロオロしている。
これには皇帝陛下も苦笑い。
「ウィッチの姐さん、俺が直接報告にするんで大丈夫ですよ。マナミの嬢ちゃん、もし他に受領書があるならギルドマスターに預けてくれ。
ギルドマスターに依頼主の所へ確認に行って貰えば良いから。」
本当は規則上ダメだと思うけど・・・
「お願いします」と言いギルドマスターに受領書を預けた。
僕たちはウィッチさんと一緒に学校に向かった。
残された男達
「結婚相手は、しっかり考えた方が良いですよ。陛下。」
「ハハ・・・違いない。」
皇帝は笑っていたが、瞳に光がなかったという。




