第31話 常識って・・・
「ラック、それにマナミ。アンタ達は何をしたんだい?」
「僕は固有魔法を3つ発動しました。」
「触媒無しの無詠唱でかい?」
僕はハイと答えた。
エルフィアの村で軽く稽古をつけてもらってた頃は杖を使ってたけど、途中から杖なくても出来るんじゃない?って思って魔法を使ったら意外にも上手くいったのでそうしていた。
そもそもの所、その杖はジジィさんがラックさんに送ったものだし。
「触媒なしは転生者だからで済ましておくとしよう。それでどんな魔法だい?」
さりげなく変な事を言われた気がするけど、僕は質問に答えた。
「まずは、風だけ燃やす100℃で透明な鎧の形をした炎を出しました。」
「面白い発想をするね。私も同じ炎を使うエルフだが、燃やす対象を見えないものに限定するまでは考えた事は無かったよ。」
人形やラックさんを事故で燃やしてしまったら洒落にならないので・・・
「2つ目は重力魔法です。防がれましたけど。」
「重力魔法は一応あるんだけどね・・・。他に固有魔法ならではの特徴がある筈だよ?」
この魔法はその場のノリと勢いで創っちゃったから特徴って言われてもな・・・。
「はぁ、その顔はちゃんと理解して無いね。それはいいとして、最後は何を使ったんだい?」
マドリーさん・・・うん、呆れてる。
「魔法封印ですね・・・。これも防がれちゃいましたけど。」
「魔法封印?詠唱ができない状態にする魔法なんだがね・・・。無詠唱の使い手には意味のない魔法なんだが、それとは何が違うんだい?」
え?同名の魔法があるんだ・・・
僕はラックさんの顔をチラッと見た。
ラックさんは微笑んでいる。
あの顔は、知ってたな・・・。
「魔力の値を一時的に0にするんです。魔力の無い生き物は魔法が使えないとエルフィアで聞いたので。
実際にステータスがそうなっているのかは鑑定持ちの方が見てみないとわかりませんけどね。」
マドリーさんの反応を見る限りではステータスを弄る魔法は難しいらしい。
「マナミは常識を知った方が良いって意味では学校に通わせて正解だったみたいだね。」
色々あって、まだ、一度も通ってないんですけど・・・。
この世界の魔法事情を知らないが為に厄介な事になったりしてます。
人形の体になったりしてますけど、それでも僕は元気です。
「それでラック?あの魔法を誰に習ったんだい?」
マドリーさんは良い笑顔でラックさんに話しかけた。
「お祖父ちゃんに習いました。」
「そうかい。あのバカ亭主かい。」
ジジィさん逃げて下さい。
表情は笑ってるけど完全に怒ってるやつです。
後ろに猛獣的な何かが見えてるのは気のせいだと思いたい。
もう一回言いたい。
ジジィさん逃げて!
「風のエルフ消耗が激しいから極力使っちゃ駄目だよ。あの阿呆でも3秒持たないんだから。・・あれ?そういえば、何秒変身してたんだい?」
「大体、60秒ですよね、マナミさん?」
「その位でしたね。」
「限界は100秒位ですね。」
「そ、そうかい。お前が、辛く無いなら良いんだよ。マナミの魔法を防いだのはどんな魔法だい?」
ラックさんがさっき固有スキルで創った固有魔法だ。
「魔法の効果を逆にするという効果です。使い所は難しいですけど・・・。」
「・・・」
「また、固まっちゃいましたね。」
マドリーさん、大丈夫かな?
僕たちはマドリーさんの想定を超えていたようである。




