第27話 皇帝とエルフ
「召喚魔法ね。それは俺よりもそっちの方が詳しいんじゃないか?」
『・・・あの人と喋りたくないんですけど、私の方が話します。』
妖精さん・・・。
『ちょっと身体を返してもらいます。』
今朝の冒険者ギルドの時と同じで僕とラックさんが意識が重なるような感じがした。
「『・・・調教師の魔物使役や召喚士の魔物召喚は形式は違いますが、共通してる事があります。それはその魔物を一度倒して認められる事です。』」
「俺の知る限りだと召喚や使役の魔物の亡骸は消える。昨日の群れは俺が冒険者ギルドに持ち込んだ。だから野生で間違いはない。」
「『やっぱり貴方でしたか。』」
今朝、一部のを受けた一因でもある。
ラックさんは冒険者の襲撃を受けた原因である。
笑顔だが、制裁加える気満々か。
気持ちが伝わってくる。
陛下逃げて下さい。
「『それは後にして、影の狼が消えなかったのならその群れは野生で確定ですね。』」
「『それより昨日使ってた、その両眼は何の魔眼なんです?』」
「何のことだ?」
「『ちゃんと答えて下さい!』」
「そこも気付いてるのかよ。エルフの方は抜け目がないな。・・・透視の魔眼と予知の魔眼だ。透視は探知と鑑定を使える魔眼。
この眼のお陰でお前達が特殊な存在だとわかった。予知は未来予知だな。両方使うとより先の未来が見える。」
「『両方組み合わせてみたらどんな未来が見えたんです?』」
「・・・数週間前、エルフの集落が影の狼の群れに襲撃をされ、1人のエルフがこの町の近くの森の中で死ぬ未来が視えた。その時は影の狼の出現なんぞ、あり得ないと思っていたんだが、本当に起きていたらヤバイからな。念の為に調査をしたら、集落は襲われたものの犠牲者は出てない事、村に帰ってきたら話し方が変わったエルフの話を聞いてな。」
僕が来た事で未来が変わったのかな?
「エルフィアの帰りにお前達に会ったのは偶然だ。あの時に再度、予知したら今日の真夜中に襲撃される内容だった。」
どうして襲撃が早まったのだろうか?
「俺の憶測だがマナミの嬢ちゃんは予知の外にいる。2度も予知が外れるなんて事は無かったからな。」
「『エルフィアにどうやって入ったんですか?あの村には結界があります。事と次第によっては・・・。』」
あの村には知り合いが居ないと拒まれる結界が張り巡らせてあったな・・・。
「あぁ、あの村のエルフにはガキの頃に助けてもらった事がある。師匠も元気みたいだったしな。」
何の師匠だろう?
『お笑いとかじゃないですか?』
お笑いをやるエルフはいなかったよね?
「『そうですか。エルフに敵意がない事はわかりました。』」
と言って僕が前面に出た。
・・・引っ込む前に感じたラックさんの気持ちは何だろうか?
『・・・何もないですよ。』
「端的に言うとお前らは誰かの悪意に晒されてる。」
悪意?一体誰が・・・。
「まぁ、考えても仕方ない。お前達に護衛をつけたいんだが・・・どうする?」
『どんな方が護衛するのか見てから判断した方が良さそうですね。』
僕もそう思う。万が一、その護衛の中に僕らを狙う犯人が紛れてたら目も当てられない。
「会って判断すると言うのは?」
「構わない。1週間後にまた来て貰う。これは今回の報酬だ。少ないかもしれないがな。」
「金貨3枚はいいとして、何ですこれは?」
エン・・・もとい皇帝陛下に渡されたのは金貨2枚と等身大の人形だった。




