第23話 イースの町の冒険者ギルド
イースの町冒険者ギルド
ギルドの開く時間に合わせて僕らはやってきた。
荒くれ者に絡まれるなんてテンプレは今のところ起きてない。
受付は3つあり僕は如何にも新人と思しき若い女性の所に並んだ。
『おじさんは暫く関わりたくないです。』
と妖精さんが言ったからである。
(残り2つの受付は中年男性。)
「おはようございます。今日はどの様なご用件ですか?」
「ウェスティンの冒険者マナミ・クロセと言います。昨日の影の狼の件で報告に来ました。」
と言ってギルドカードを出した。
「え?・・・・」
受付嬢さんがフリーズしている。
「大丈夫ですか?」
と声をかけると
「は、はい。【風刃の妖精】マナミ様ですね。ギ、ギルドマスターの執務室までご案内致します。」
と言われた。
『なんか、恥ずかしいですね。2つ名前付きはCランクでは珍しい事です。』
・・・嬉しいんだろうな。
僕は恥ずかしいかな?
ギルドマスターの執務室まで受付嬢さんと雑談をしたのだが、彼女の名前はリリアン。僕と同い年のヒト族。今日が初の仕事らしい。
「驚きました。同い年なのにCランクの冒険者で影の狼を30匹以上単独で討伐するなんて・・・」
それは僕じゃなく妖精さんなんですよね・・・。
『ギルド受付職員になる方が凄いと思いますよ?』
そうなの?
『最低でもDランクの実力と魔物、道具、薬品、その他のあらゆる知識が無いと受付になれないそうですから。』
そうだよね。知識が無くて受付なんかできないよね。
さらに雑談をしながら執務室の前まで来た。
「こちらがギルドマスターの執務室です。」
リリアンがドアをノックする。
「ギルドマスター。受付のリリアンです。【風刃の妖精】のマナミ様をお連れ致しました。」
「入りなさい。」と男性の声がした。
「失礼します。」と言ってリリアンが扉を開いた。
中には如何にも荒くれ者といった感じの男がいた。
「リリアン、受付に戻ってくれ。」
「はい。それでは失礼します。」
と言ってリリアンは戻って行った。
「さて、まずは自己紹介だな。俺の名前はトレジャー・ハント、ここのギルドマスターだ。」
ハント?昨日もこんな事が・・・。
「あぁ、アイツ説明してないのか。ウイッチは俺の妻だ。婿入りしたからハントって名乗ってる。」
『どうやったらあんな綺麗な人と結婚できるんですかね。』
今日も妖精さんは中年男性に辛辣だ。
「Cランク冒険者マナミ・クロセです。」
「イースの町の冒険者ギルドが把握してる限りだと30以上の影の狼を討伐したらしいが本当か?」
「はい。」
「なら権利はアンタにあるな。影の狼の亡骸なんだが、親切な御仁がギルドに持ち込んでな、【風刃の妖精】マナミ・クロセと言う冒険者に権利があると言って帰ったそうだ。」
トレジャーは溜息を吐いて、
「そこまでは良いんだが、一部の血の気が多いい馬鹿どもが決闘させろとか、Cランクに倒せる筈がないとか騒ぎ始めてな・・・。」
『面倒な事になってますね。』
そうだね・・・。ん?今、さらっと2つ名の原因言ってませんでした?
『多分、あの人ですね。見つけ次第お礼をしましょう☆』
妖精さんが☆までつける相手は・・・あぁ、あの人か。
「本題はその事じゃないんだ。お前宛に指名依頼が入った。」
『指名依頼は冒険者にとって名誉ですよ!』
面倒ごとじゃなきゃいいんだけど・・・




