第22話 影の狼2
「影の狼が出たぞ!」
と誰かが叫んだ。
『町中にモンスターが湧くのはおかしいです。あの時より遥かに数が多いみたいです。』
影の狼って確か・・・
『Aランクの魔物です。』
それが目の前で30以上・・・。
『救助が先です。討伐しながらやりましょう。』
ゴメン、僕じゃ戦えない。助けを呼ぶ為に撤退します。
中距離瞬間移動!
アレ?発動しない・・・
警告、LINKが切れました。
それに伴い固有スキル1つと固有魔法に使用制限がかかります。
『・・・私がやります。」
体から魂が引き剥がされるような感じがした。
どうやら、ラックさんが表に出たようだ。
僕は今、彼女の内側にいる。
『ラックさん。落ち着いて下さい。』
「・・・」
ラックさんはかなり怒っているようだ。
「風の契約により私とともにありし者、私に力を貸したまえ。」
風が吹き荒れ彼女を包み込んだ。
『何がおきてるの?』
ステータス
種族:風のエルフ
風属性の精霊。
MP切れで元のエルフに戻る。
街に被害が出ない様に風の刃を放ち10匹以上の影の狼を倒していく。
あんな魔法の使い方をして大丈夫なのだろうか?
ステータスを見てみるとMPが底を尽きそうだ。
『ラックさん!MPが無くなりそうです。魔力回復薬を飲んでください!』
「まだ、少し残ってる。倒さなきゃ・・・」
僕の言葉を聞いていない。
やはり逃げる選択肢を選んだ、僕にも怒っているのだろうか・・・。
後、5、6匹というところで姿が戻ってしまった。
そして、MP切れで彼女は倒れて動けなくなった。
「あの時とまた同じ・・・。ごめんなさい・・・。」
影の狼が彼女を襲おうとした時、
「他の国々で調べものして故国に帰って来たら何で町中に影の狼が出現してんだよ?」
「・・・知りませんよ。」
ラックさんが嫌そうに答える。
「いついかなる時でも冒険者たる者冷静であれだ。マナミ・クロセ。いや、今は違うみたいだな。」
「貴方には会いたくなかったです。」
『ラックさんが嫌がる人って・・・』
「捕縛せよ!魔力の網!」
3匹の狼が魔力でできた網に囚われた。
「・・・2匹は逃げちまったか。」
近くには、おっさん顔の青年がいた。
彼女の意識がなくなり僕が表に出た。
とりあえずやる事は妖精さんのふりをする。
今のやり取りを聞いた感じだとエンさんは妖精さんには妙に優しい。
「傷の・・・手当を・・・」
全身が物凄く痛い・・・。
よくこんな状態で戦えてたよな・・・。
ステータスコマンドを開いて薬品類を出しても構わないだろうけどこれだけ人が集まっている中ではちょっとな・・・。
(収納持ちだとバレたくないからね。)
「俺は回復魔法は使えなくてな。術者がいるのは治癒院と冒険者ギルドと学校だ。どこが良いんだ?」
「ハント・さ・・・」
「姉の方か?」
と言われたので彼を睨みつけた。この人は彼女が職人だと知って言っている。
「流石に意地悪してる場合じゃないな。普段通りにしてくれないかね?マナミの嬢ちゃん?」
「ど・・して・・・」
なんでわかったんだろう?
「それについては・・・今度、2人で俺のとこに来な。話してやるよ。」
エンさんによって魔法学校の医務室に担ぎ込まれ、そこで数人の教師(ハントさんを含む)に回復魔法をかけて貰った。
ハントさんからは
「明日の授業は休んで良いから、冒険者ギルドに影の狼の報告に行って。」と言われた。
授業がお預けとなってしまった・・・。
『・・・マナミさん。私が意識を失ってどの位経ちました?』
起きたみたいだな・・・。
「6時間くらいです。」
『・・・ごめんなさい、マナミさん。あの時、学校に行って助けを呼ぶべきでしたね・・・』
「僕の方こそゴメン・・・。」
今、冷静に考えると中距離瞬間移動を自分にかけながら移動すれば救助しながら距離をとる事も出来た。もしくは影の狼を遠くに飛ばして時間を稼げたかなって・・・。
『・・・私達まだ未熟ですね。』
そうだね。明日からまた2人で頑張ろう!
LINKが回復しました。
固有スキル、固有魔法の制限が解除されました。
『そうですね。朝、ギルドに行くんですよね?早く寝ましょう。』
おやすみ。ラックさん。
ああ、私の愛しの人。
やっと出て来てくれたのね。
でも、やっぱりあのエルフは邪魔ね。
まずは、その為にも・・・




