第21話 影の狼1
「あんた、冒険者か魔術ギルドのもんかい?」
「一応、冒険者ですけども・・・」
「なら話しても構わないかね。魔法の鞄が高い理由なんだけどね。
影の狼って呼ばれる魔物を知ってるかい?」
その名はよく知っている。
彼女を命を奪い寸前まで追いやった魔物だ。
「その顔は知ってるな?なら話が早い。魔法の鞄の素材の1つなんだ。それと、爺さんと共同開発をしてる杖の素材でもある。ただ、知っての通り影の狼は遭遇=死だからね。」
影の狼は群れを成す魔物の代名詞だからな。
タチの悪いことに1匹がAランクの強さだ。
だからこそ、冒険者ギルドではAランク10人以上で討伐に向かうそうだ。
『それならあの時、素材を取った方が良かったみたいですね・・・。』
命からがらなんだから仕方ないですよ。
(僕は、この世界にとばされて瀕死だったから余裕がなかったし・・・)
僕としてはこの世界に来てから直ぐにそんな話を聞いているので、遭遇したら逃げ1択と決めている。
「そんな顔しなくても大丈夫さ。やつらは人里までは来ないしな。さ、ちょっと早いけど今日はもう、店を閉めるとするか。何か、欲しいものがあったら相談に乗るよ。」
僕はお礼を言って店を後にした。
もう夕日が沈みかけている。
領域外の為替発動
『いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?』
よかった。まだ時間外じゃなかった。
ロックの解除をお願いします。
『かしこまりました。本日はご通帳と印鑑、それと本人確認のできるものはございますか?』
リアルだ・・・。コレ、完全に窓口だ。
でも、どれも無理でしょ・・・。
印鑑も通帳も僕の世界にある。
それに今はブラック・ネームという名の別人だ。
『冗談です。解除しておきますね。
通帳と印鑑と運転免許証はレプリカですが、アイテムボックスに入れておきます。次はそれで対処致します。
それと今後は気をつけるようにとブラック様にお伝え下さい。』
と言ってスキルは自動で解除された。
意思を持ってるよね?領域外の為替。
アイテムボックス
普通自動車運転免許証(MT)(レプリカ)
・免許証のレプリカ。車がないので当然使えません。
通帳
・通帳のレプリカ。預ける銀行がないので当然使えません。
印鑑
・印鑑のレプリカ。朱肉があれば使えます。捺印、押印にどうぞ。
・・・印鑑は使えるんだ。
と思っていたら、
「ワォーーーーーーーーン」
と狼の雄叫びが響き渡る。
「この辺って狼がいるんですね。」
『変ですね?この街には門があって結界もありますから狼なんて居るわけありません。』
と、いつもの脳内会話をしていたら
「影の狼が出たぞ!」と誰かが叫んだ。




