第20話 買い物3
残るはエンチャンター工房
名前的に付与専門の工房かな。
魔法通りにあるのだけど、かなり学校から離れている。
職人街と呼ばれる所に隣接しており魔法通りの端にある。
外から店内を見ると普通の雑貨屋に見えるが、あの雑貨はおそらく魔法の品物なのだろう。
外から様子を伺っていると、
「冷やかしなら帰んな!」
「あ、それでは。失礼しました。」
冷やかしのつもりでは無かったのだが、大分日が傾いてきてるし今日はもういいかと思い、帰ろうとした。
「本当に帰る奴がいるかい?」
ここにいますよ。とは言えない。
『そんな事をするのはマナミさんだけでは?』
ラックさんも多分、同じ事するよね?
『さぁ?』
可愛くとぼけているけど、この妖精さんも同じことするな・・・。
「私は鍛冶師兼付与魔術師のウォール・ハント。この店の店主さ。」
ハント?もしかして・・・
「妹の紹介で来たんだろ?ウチの主な商売は学校の推奨品の取り扱いをしている。工房ってより雑貨屋だな。」
名前が付与にちなんでるからそう言う工房なのかと思ったらおしゃれな雑貨屋。
「他には既製品に付与魔術をかけたり、オーダーメイドで武器や防具の製作をしている。最近は杖屋のケイン爺さんと杖の共同開発なんかもしてる。」
あ、一応、名前通りの工房でもあるんだ。
「よく勘違いされるんだが、私は職人街の所属さ。妹が名のある魔法使いだからかな?」
魔法の品物ばっかり売ってるからでは?
「ギルド所属なら冒険者割とか学生割引するからなんか買ってくといい。」
っと言われても買うものが無いんだよな・・・。
『買うものはありますよ?鞄です。魔法の鞄があるか聞いてください。』
通販のCM思い出すな。
今日の商品はこちら、物理法則無視の何でも入る鞄、
その名も魔法の鞄です。
実際の所、でもお高いんでしょ?って言いたくなる。
『変な事を考えてないで早く聞いて下さい。』
僕には固有スキルがあるから要らないんだけどな・・・。
「魔法の鞄とかありますか?」
「あるけど、学生さんには厳しい金額だよ?」
「いくらですか?『領域外の為替を起動』」
ちょ、何してんですか!
「容量それなりだからね。金貨90枚。割引は効かないよ。」
僕とラックさんの全財産は約金貨30枚なので足りない。
「やっぱり高いですね。」
と苦笑いでウォールさんに言った。
『あ、これギルドの私のギルド口座だ。マナミさん口座には繋がらないんだ。』
妖精さんは僕の口座に接続して失敗したようだ。
『私の口座に繋いだので、マナミさんの口座に繋いで下さいって言ったら、せきゅりてぃーの為に暗証番号を入れて下さいって言われて繋げなかったんです。』
やっぱり妙にリアル。
『3回間違えたのでろっくしたそうです。』
何してくれてるの・・・。
・・・ちょっと手続きしてくる。
スキル:領域外の為替はそんな所までリアルなATMなんだなと感じた。




