第16話 入寮
イースの町の門
今日の門番は昨日と違って若い男だった。
「おい、今のは何だ!?1キロ先にいると思ったら反応が消えて目の前に出てきたよな?」
と門番が驚いてたずねてきた。
「魔法です。」
嘘は言ってない。
「俺は魔法が使えないから解らないが・・・あんまり人前で使うなよ?急に出てこられると驚くから・・・」
それもそうだな・・・。
転移先は少し考えよう。
「それとこの町に限った事ではないが、町に入る時は必ず門から入って門から出る事。そうしないと不法侵入の罪になる。」
・・・うん、気をつけよう。
昨日と同じように冒険者のギルドカードを見せて町の中へ入った。
イースの町
さっきの門番の人、1キロ先がわかるって視力が良いんですかね?
『気配探知ですね。今日の門番さんは一般人よりは探知に長けてます。』
と妖精さんが真面目に解説をしてくれる。
ボケてみただけですからね。
ファンタジー世界だから探知だっていうのは薄々気づいてましたからね。
『凄い人だと5キロ先まで探知できるとか。』
へぇ〜そうなんだ。魔物とか探知できれば便利なんだけどな・・・
『魔力を使って似たような事ができるので今度教えますね。』
それ魔力探知ですか?
『そうです。本当は身体強化が出来るようになってからにしたかったんですけど・・・』
・・・ごめんなさい。
と会話をしている間に校門に到着した。
『もう学校の前ですね。魔女の人にお婆ちゃんからの手紙を渡して寝泊まりする所を探しましょう。』
守衛さんに話しかけようとすると
「教師の件、考えてくれた?」
ハントさんが来た。どうして僕が来た事がわかったのだろう?あ、探知か。
『魔力探知ですね。あの魔女の人、レベル的に町中の人を探知できてるんじゃないですか?』
「どうして来たの?って顔をしてるけど私ね、町全体に魔力探知をかけてるの。」
妖精さんの見解、当たってたよ。
「その件なんですが、祖母と相談をしまして・・・辞退させて頂きます。それと、祖母からの手紙です。」
と言って手紙を渡した。
ハントさんは手紙を読んで冷や汗をかいている。
「緑炎様を敵に回したくないわね・・・。」
一体何を書いたんです。お祖母ちゃん?
「住む所はまだよね?学生寮があるんだけど、三食付きで月金貨3枚。この町だと安くても月5枚とか取られるわよ?」
ウェスティンの街の宿屋って一泊銀貨4枚だっけ?
『一泊(2食付き)銀貨3枚です。』
そうすると宿屋生活は月(30日)で考えると銀貨90枚・・・つまり金貨9枚になるのか。
寮住まいのが良いのか・・・。
でも、極力お金を使いたくないんだよな・・・。
折角、瞬間移動が使えるようになったのだから・・・
『故郷には帰りませんよ?』
それなら・・・
『お祖母ちゃんと暮らす気もありませんよ?』
何で言いたい事がわかったの?
『勘です。親元から離れて生活がしたいんです。
マナミさんには、そんな時期なかったんですか?』
・・・ありますね。
(今は、親元はおろか世界から離れてしまってるけど。)
「ボーッとしてどうしたの?決めた?」
とハントさんが僕に話しかけた。
「学生寮に住みます。一応、冒険者なんですけども、ギルドの口座から引き落としできます?」
「できるわよ。来月から引き落としでいいわね?
じゃ、これ鍵ね。部屋番号は鍵にかいてあるわ。建物は向こうのアレ。買い物に行くなら学校指定は特に無いけどオススメのお店のリストをあげるわ。」
紙のような何かの皮を受け取り、向こうと言われた方を見ると昭和のアパートがあった。周囲が中世の街並みだから世界観にあってない。
『変わった建物ですね。』
・・・絶対転移者とか、転生者の仕業だろう。




