第113話 牢の一幕
ノースの城の牢屋の一室。
1人の老人が捕われていた。
彼は罪を犯したわけでなく捕まった。
牢屋に入っている老人の正体は、この国で1番偉かった男である。
「陛下の名を語った罪人、今から陛下がお見えになる。失礼ない様にしろ!」
そう牢番が怒鳴り声で言った数分後、1人の老人が数人の護衛を引き連れてやってきた。
「うむ。見張りご苦労。此奴と2人っきりで話がしたい。」
「しかし・・・」
「言いたい事はわかる。それでも此奴と2人っきりで話がしたいのだ。」
「はぁ、それでは何かあった時はこの鈴を鳴らして下さい。直ぐに駆けつけますので。」
そう言って、牢番や護衛達は去っていった。
「フハハハハハハハハ!牢屋にいるのが本物で俺が偽物だとは誰も気が付かないとはな。」
「俺の姿をして何をしようとしてんだ?」
「ふん、お前に話す事などない。」
「お前だと?親にその口の聞き方はねーだろ!」
「まぁ、怒るなよ。そんな親父殿に朗報だ。アリシアが生きていた。だが、盗賊に身を窶していて帝国に捕まり、近々、うちの国に引き渡される。これで表立って罪人として処理ができる。別人としてな。これでこの国は俺のものだ。」
「ノルド!貴様ぁ!」
老人は声を荒げた。
牢の外にいる男は顔を自分のものへと戻しながら牢越しから顔を近づけた。
「その顔が見たかった。アンタが大切にしていたものを全て壊してやるよ!」
そう言い放ったノルドの目は狂気に満ちていた。




