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八百長世界 NewGENERATIONS DAEMONKING  作者: ブリマグロ
人間界を知る -魔法は万物の素となる学び-
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第006話 これからと朝食と魔王の片鱗

魔王様(一応主人公みたいなポジ)

大魔王様(父親)

王妃様(母上)

姫様(妹)


魔王の家族はこんな感じ


『ダイナモルド』

そこは魔法都市エルドラドを中心とし、東と南に海、西に『フラウエジ』と呼ばれる火山群、北には霊峰『カルナ』、その間を抜けた北西に聖都と呼ばれる地域が存在している。この部分を読んでいる向こう側の勤勉な皆々様方にわかりやすく説明すると、アフリカ大陸を左右反転させたような形の大陸と思っていただければ幸いである。


「誰と話してるの?」


「なに。気にすることはない。ただあらかじめ言っておかなくてはいけないという使命感のようなものを感じただけだ。」


昨晩から夜が明けるまで黒の蝕み花の蜜を使い部屋の水路の循環性能を向上させながら、これからの活動方針について深く熱く語り合った結果。まず最初はアレン(魔王様)がAランクのライセンスを取得すること。サクがそのサポートをしながら魔法触媒を集める。この二つでまとまった。


「そうそう。一応これから組むのだからこのあとの試験は私も同行することにするわ。パートナーのこと、ちゃんと知っておくのも大切でしょ。」


「たしか剣術と魔法を使った模擬戦とか言ってたな。して、その強さはいかほどかな?」


「そうね。私からの推薦ってことは単独ライセンスB以上の人が担当するかもしれない。」


「ふーん。で、サクはどんな風に推薦したんだ?興味があるんだが。」


「そんな怖い顔で見ないでくれないかしら。私はただとても腕の立つ人が来ているんだけど、この大陸でのライセンスを持ってないって話をしただけ。」


「目を合わせて話してくれませんかねぇ・・・」


「さ。私は食べ終わったからアルバスも早く食べちゃいなさい。」


「へいへい。」


普段なら他愛のない世間話のようなものだが、食堂で朝食をとっている二人を見た周囲のものたちは固まったまましばらく動くことができなかった。

いつも無口で一人で食事をしているサクが、見たこともない男性と会話しながら食事をしているという光景だけではなく。実は近づき難いだけでサクのことを見ている何名ものファンたちが入り口や近くのテーブルで泡を吹いて倒れるものが続出し、どこかで呪いの魔法を唱えた奴もいたみたいだが、すぐさまトイレに駆け込んで昼食前まで垂れ流していたとかいないとか。ただめちゃくちゃ臭いっていう噂だけが広がった。





魔法都市エルドラド エルドラド城内マジックアカデミー中庭

中央には伝説の戦士と魔法使いとして語られている者たちの銅像が建てられている広大な中庭には、どこからか漏れた噂が広がり既に何名かの生徒が集まっていた。

最初はサクの連れてきた人の試験だったのが、曰く凄腕の戦士、曰く賢者クラスの魔法使い、曰くサクを射止めたやり手。などという根も葉もない噂へと拡大解釈されてしまった。


(こうもギャラリーがいると、いつも以上に気を使う必要があるのが面倒だな。まあいい。ちゃっちゃと終わら話題になるというのもまた一興。)


「アレン。そろそろ始まるわ。準備は大丈夫?」


「以前問題はない。好きに戦えばいいんだろ?」


アレンは来る途中にどこかから掻っ攫ってきた直剣の振り心地を確かめながら適当に答える。その姿にはどこか絶対強者のような雰囲気があり、頭ではなく直感でその存在に気が付いたものが次第に中庭に集まってきた。


(人間の世界にも腕のいい鍛冶屋がいるんだな。作りはまだ甘いが剣自体の魔力伝達がかなりいい。魔界で作られたものばかり使っていが、成程これが人間の知恵が生み出したものか。)


まさに武器というのは人間の体より何倍もの大きさ魔物に対する手段として作られており、魔力強化の効果の持続が長く続く構造になっているものが多い。


それから少しだけ時間が過ぎ、ガチャンガチャンと音を立てながら顔面部分以外をガチガチに固めた重厚な鎧を着た兵士が歩いてきた。肩と腕にある青が部分が印象的なその防具は、入り口や街を巡回している兵士とは明らかに違うものを感じる。


「アレン。あの人はBライセンス所持者よ。ここの兵士はライセンスによって着ている防具が違うの。あの鎧を着ている兵士は貴族の護衛や大型魔物の討伐の指揮を行う人物よ。」


「ふーん。そんで強いのか?」


「かなり強いわよ。」


『そろそろいいかね。私が今回君の試験を担当する。サーカス・エッジシザーだ。守護騎士団の一番隊を任されている。思いっきりかかってきていいぞ。』


「思いっきり・・・ねぇ・・・それは殺してもいいってことか。」


『っっっ!あ、ああ・・・そのくらいの勢いで来いということだ。』


アレンは直剣を、サーカスは剣と盾を構える。いまにも始まりそうな激戦を予感させる空気が場を支配する。歴戦の戦士であるサーカスは決闘をするかの様にジリジリと間合いを計りながら様子を伺っている。身の毛もよだつ感覚が全身を駆け巡り、目の前にいる相手に対して心のどこかで恐怖を覚えてしまった。どこか飄々としながらも、その姿は嬉々として人を殺して回るような狂気が垣間見える。


(なんだいったい。まるでドラゴンを目の前にしているような感覚は・・・足が前に動かない・・・)


「どうしたんすか?動かないならこっちから行かせてもらいますよ。」


「!!?」


ガギンッ!


一瞬の出来事である。懐に潜り込んだアレンの一撃はサーカスの反射的に構えた盾によって防がれた。だがその攻撃の重さは剣と盾がぶつかった時の大きな音、そして重厚な鎧を着こんでいるのにも関わらず後ろに飛ばされたサーカスと、地面と接していた足によってできた二本の直線が物語っている。


(速い!そして重い!とっさにガードできたが、もしまともに受けてたら・・・)


左腕の痺れを隠しながら再び盾を構えるサーカス。その眼はもはや試験管としてはなく凶悪な魔物を相手にするときのそれであった。


「いまのを防ぐとは流石の腕というわけですね。それならこれはどうだ。」


「触媒と呪文を使わないでの属性付与・・・初めて見た・・・」


アレンが直剣に手をかざすと柄の部分から先端に向けて渦を巻くように風を纏う。斬ることに特化した魔法の付与。いわゆるエンチャントというものだ。本来は剣に塗り込んだ触媒を使って属性魔法を纏わせるというのが付与の方法なのだが、いま行ったのは途中の過程をすっ飛ばすというものだ。


(先ほどのパワー。そして呪文や触媒、魔法陣無しでの属性付与・・・この国でもあまりお目にかかれない魔法戦士タイプ。しかもまだまだ伸びしろのある才能の塊。ここで潰すのは惜しいが、私にも意地がある。悪いが勝たせてもらおう。)


一回のぶつかり合いと属性付与によって相手の力量を感じ取ったサーカス。だが簡単に負けてあげるようなことはしない。騎士としての意地がそうさせているのか、それともプライドなのかはわからないが、盾を捨て両手で剣を持ち構える。


ザッザッ!ブォン!ゴガシャン!ガギンッガギンッ!ギギギギギギギィ・・・ガシャン!!


風の属性付与を受けた直剣はより鋭くなり一振りごと相手の命を刈り取る死神の鎌の様であった。その時のほんの僅かな打ち合いは中庭の一部を崩壊させるのに十分であった。空振りにより起きた真空刃は木々を切り裂き城の壁に大きな傷を付け、地面には深く細い溝をいくつも生み出す。その暴力的なまでの剣筋は局地的な災害にも見て取れるほどに恐ろしく、とてもじゃないが人の逆らえるものではなかった。

サーカスは幾度となく重たい剣を受け息が上がっているのに加え着ていた威厳のある重厚な鎧には無数の傷が付き徐々に防御という意味を成さなくなり始めている。それに対してアレンは全くと言っていいほどに体力の減りを感じさせない。素早い動きからの重たい一撃というのは短期決戦によく見られる戦法であり、一気に莫大な体力消耗することになる。


(騎士と言っても所詮はこんなものか。これ以上長引かせても意味がない。なんだか興も削がれてきたし、そろそろ幕引きとしよう。)


アレンは深く腰を落とし半身を向けた状態で直剣の切っ先を相手に向け、峰に軽く左手を添えた構えを取った。その不思議な構えに周囲はざわめく。


「魔剣―――風槍刺突!!」


全身のバネを使い突き出された剣は鋭く尖った風の槍を放つ。あらゆるものを削り穿つかの如き必殺の威力を持つその一撃。が、その切っ先は第三者の手によって防がれることになる。


『そこまでだ。』


ブブォン!


暴風はそよ風となり、自然へと還っていった。


「だ、団長・・・」


『随分と派手にやったなサーカス。』


突如として現れた団長と呼ばれる男は風の槍を背負った大剣で薙ぎ払い、動けないでいたサーカスを肩に担いだ。


『おめでとう。君の実力はじっくりと見させてもらった。その腕ならAライセンスもそう遠くはないだろう。もし興味があったら騎士団に入る気はないか?君ならすぐにでも隊長クラスになれるぞ。』


団長の誘いをしり目にアレンはサクの後ろに立ち、両肩に手を置いた。


「悪いが断らせてもう。いまはこいつの相棒なんだ。」


『そうであったか、それならしかたない。また機会があったら誘わせてもらう。』


団長はそれだけ言ってどこかへと行ってしまった。


「来て。」


「ちょちょっ、いきなり引っ張るなよ!」


今度は顔を赤くしたサクはアレンを連れていなくなってしまう。

当事者がいなくなった中庭からは次第に人がいなくなる。壁の傷や抉れた地面、倒れた木々という異常を残しながら、いつも通りの時間が再び訪れた。




魔物図鑑 007 ゴーレム

土や石で構成されている魔法生物。生息している地域によって溶岩や氷塊で出来ていので必ずしも弱点が同じとは限らない。核として埋め込まれた触媒によって生み出されたゴーレムは主に農作業のサポートして動いている。かつての大戦ではゴーレムを敵陣に突っ込ませて爆発させるという兵器と扱われていたこともあり、農作用に作られた触媒を国の方針で販売している地域もある。

体から木が生えているのは根っこが核に絡みついている場合もあるので、そういうゴーレムは無理やり動かさないようにしよう。


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