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八百長世界 NewGENERATIONS DAEMONKING  作者: ブリマグロ
人間界を知る -魔法は万物の素となる学び-
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第005話 秘密主義

いつからそうだったのか

最初からそうだったのか

今となってはわからない

それは後悔なのだろうか

それは償いなのだろうか

もう知る由はなにもない


魔法都市エルドラド城壁内部


そこには魔法都市特有施設のがいくつか存在している。その内の一つにマジックアカデミーというネーミングセンスの欠片も感じさせることのない魔法学園というのがある。発足当時は「もう少し捻った方がいいんじゃないか?」という声も多かったが、エルドラドが魔法に関して発展を遂げ、それこそ各地に存在している魔法関係の学校の頂点として認められるまでになったことからマジックアカデミーという名称で落ち着いたという一見複雑そうに見えて実際に複雑な経緯があった由緒正しい学園なのだ。


そんなマジックアカデミーの殆どの生徒は城の一部を学園の寮として生活をしている。とはいえ、実際のところ生徒には魔法だけではなく多種多様な職についての基礎を学ぶ場所といってもいい。大きく分けるとしたら

王国直属の騎士による実践的な戦闘を中心とした前衛職、基礎魔法から上級の複合魔法などを多くのサポートが学べる後衛職、この二つに分かれてから細部に枝分かれしている。


職なんてものは大抵は親の跡を継ぐようになっている。特にわかりやすいのは特別な血筋を持っている者たち。世界中を探しても両手で数えるくらいしか存在していないが例えば竜殺しというドラゴンを狩り殺すことに特化している人間が存在している。竜殺しの力を引き出す武器というのは選ばれた者のみにしか、その真の力を扱うことができない。もし資格のないものが持てば武器に掛けられた呪いに飲み込まれ敵味方問わず殺し合うという悲惨な結果しか生まない。

だがドラゴン退治には必ずしも竜殺しの存在が必要というわけではない。数えきれない程の兵や冒険者の犠牲と引き換えに幾度となくドラゴンを倒してきたという真実も残されている。もちろん個体の強さにもよるが使い魔や召喚獣としてのドラゴンは基本的に人に牙を剥くことはない。言わずもがな危険なのは過酷な地域で育った野生のドラゴンだ。ここで一つ気を付けて欲しいのはドラゴンというのは世間一般的には二種類存在しているというところにある。頭部・首・胴・両腕・両脚・両翼・尾の十の部位からなる翼竜タイプ。頭部・胴・尾の三つの部位からなる蛇龍タイプ。

どちらも古くから厄災をもたらす存在として知られているが同時に竜殺しという存在の伝説も多く語り継がれている。


つまるところマジックアカデミーでは各々に適した職を見つけることで、学を学び、情を育み、一人前の冒険者として排出することが目的なのである。志願するものがあれば、そのまま城の兵士、魔法研究と続けることもできる場所なのだ。


「大体ここがどんなところかわかったかしら?」


「あー。わかったよ。ふーん。そういうことね。」


魔法使いのサクは城までの道を歩きながら己のことを隠しアルバスと名乗る魔王に説明をしている。

アルバスのその場しのぎで話したでっち上げの話をまとめると、もともと自然の中で暮らしていたこともあって植物の扱いに長けているという点を見込まれ蝕みの花に浸食され廃墟と化した街へ探索に向かったところ、偶然にも見つけることのできた黒の蝕み花から蜜を採取。帰ってその情報を伝えると瞬く間に広がり腕の立つ者たちが大金を求めて死に戻りを繰り返すうちに魔物が住み着くようになり帰らぬものも次第に増えていった。今では既定の実力を持たない者たち以外は立ち入り禁止ということになっているため、もう一度見るためには国からの通行所が必要になりエルドラドに来た。という話をついさっき作り上げた。


時に魔王というのは虚勢というのも必要と小さいころに聞かされたのを覚えていたおかげである。



換金しようとして訪れた店から歩くこと二十分程度のところにマジックアカデミーが建っている。

サクは入り口にいる兵と軽く話すと手招きでアルバスを学園の中に入れてくれた。そこから中庭を通り抜け寮となっている城に入り、階段を上っては下りをしてようやくたどり着いた部屋は多種多様の植物を栽培しているのが目につく。なるべく自然に近付けるために床には水路が引かれており、屋内にいるのに外にいるような草花の匂いが部屋を包み込んでいた。



「アルバス。あなたはこれからの一年間、私とコンビを組んでここで暮らすのよ。私があなたに魔法を教える。あなたは私と貴重な植物を集めに行く。Win-Winの関係ね!」


「待て待て待て。いま『貴重な植物』って言わなかったか?」


「もちろんそう言ったわ。そうね。もっと具体的に言う必要があるのを忘れていたんだけど、最終的に私が狙うのは世界樹の神木苗よ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


部屋に入るや否や、先ほどまでの無口が嘘のように話だす。


「世界樹といってもただの世界樹の苗じゃないわ。世界樹の神木苗を見つけて、それを私の手で育てるのが一番の目的。もしそれに成功したのなら・・・アルバス。私の生涯において最高の名誉をあなたに与えることを約束するわ。」


「おーけーおーけー。一応聞いておくが、ところでサクは神木苗のことを知っているのか?それがどんなものでどこにあってどれだけの力を持つかわかっているのか?」


「もちろんそんなの知らないわ!所詮は文献や逸話でしか伝えられていないのだから、実際にこの目で見て確かめて理解しなきゃ意味がないのよ!」


「オイオイオイオイオイオイオイ。それでも神木苗っていうのは世界に存在しても三本。巨大な大陸に一本在るか無いかの確立なんだぞ。しかも世界樹と呼ばれるものは魔物の巣窟になっているのに上質な魔力をほぼ無尽蔵に放出すると言われている神木苗から育った世界樹なら、それこそ毒虫を詰め込んだ闇鍋のようになっているんだぞ!」


「すでに目星は何か所か付けているわ。」


「詳しく聞かせてもらおう。」


「あならならそう言ってくれると信じていたわよ。」


サクは散らかっている机から一枚の地図を取り出し広げる。その地図には魔法都市エルドラドを中心に描かれた巨大な大陸『ダイナモルド』。その各地にバツ印が記されており、その横にCからAのマークがついている。


「この国は魔法使いの単独でも行動は認めていても、危険度D以上の地域に行くにはCランク以上のライセンスを持っている人が同行するしなきゃいけなくてね。換金所にいた戦士はBランクの所持者だったからサイクロプスの目玉を持って来れたのよ。ま、私はこれでもCランクを持っているんだけどね。知らないと思うけど単独調査でCランクを持っている魔法使いっていうのはとてもエリートなのよ。さあ!私を褒め称えなさい!ハーハッハッハッハアアアアァァァァァァ・・・・・・・」


「???」


突然サクが火を通した葉物の野菜のようにしなしなになってしまった上に、その場で真っ白に燃え尽きてしまった。


ユラァ・・・


ゴーストか死体のようにふらふらと芯のない動きでアルバスに近づき、ガッチリと両肩を掴んで凄まじい剣幕でこちらを見上げてきた。


「一つ言い忘れたけど、この部屋で起きたことは絶対に誰にも言わないでね。こう見えて無口なキャラで通っているの。お願い・・・ほんと秘密にして・・・代わりになんでも一つだけしてあげるから。」


「ほぉ・・・何でも、と言ったな。」


「え、えっちなのはダメよ!そういうのはその・・・結婚してからじゃないと・・・」


「安心しろ。そんなことは考えていない。口約束ではあるけど、その絶対命令権は必要な時に使わせてももらいとしよう。」


「くっ、なんという悪魔・・・」


「悪魔なんかよりもっと恐ろしいかもな。」


怪しく笑うその顔は悪役そのもの。すべて計算通りに事が進んだ時のような優越感とよからぬことを考えている子供のような高揚感が邪悪な笑みに浮かび上がっていた。正式ではないがこれは悪魔の契約と同じ力を持つもの。だがこれは魔王との契約。絶対命令権という逆らうことのできないものを任意のタイミングで一回使えるというのは魂や人柱といった供物には劣るが、それだけでも強い力を持っている。もはや知らなかったでは済まされない契約をしてしまったのだ。


「それでは改めて自己紹介をしよう。俺はアルバス・エドウィン。これからよろしくなサク。」


「サラスバティ・ヴァイス。それが私の名前。だから、これから二人でいるときはヴァイスって呼んで。」


「なら、これからはそうさせてもらおう。よろしく頼むぞヴァイス。」


「こちらこそよろしくね。エル。」


片や信頼の証として名を教えるもの、片や名や素性を偽るもの、偶然に偶然が重なり出会った二人。もはやこれは偶然ではなく必然。必然というのは仕組まれているものであり、逆らうことのできないもの。誰もかもが偶然という必然に踊らされて生きている。






魔物図鑑 006 蝕み花

植物系モンスターとして広域に分布している。

強い生命力は地面さえあれば根を下ろす場所を問うことはない。

種によっては急激に成長し、一夜にして国を滅ぼしたとされているほどに恐ろしい。

野生の場合、水や栄養を魔力として蓄えることから蝕み花の蜜は比較的高値で取引される。

ドーピングと使用されていた時期存在していたが、その製法を知る者は数少ない。


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