第004話 植物→ヤバイ
きっとRPGの世界で一番頭がおかしいのは道具を取り扱っている人たちだと思う。
でも私はそんな狂った人が大好きです。
エルドラド城下町
魔法都市エルドラドを象徴する場所であり観光地の一つでもある。
強力な魔法を使用する為の触媒として魔物の牙や体液といったものを使うので多くの冒険者が倒した魔物を換金しにくることから始まった。今では触媒だけではなく武器防具の加工屋、希少鉱石やアイテムの交易所、宿屋に娯楽施設も増え、冒険者にとっての大きな拠点して繁栄した街である。
冒険者というのは遠くの村の防衛や未開拓地域の探索、モンスターの討伐などを行う個人である。個人といってもそういった冒険者が仲間を集いパーティを結成することでより強いモンスター、より危険のある地域、より難易度の高い仕事を行うのが仕事である。
余談であるが勇者というのは魔王と大天使の間で取り決められた存在である。人間同士の争いで数が減るのを防ぐために魔物を人間界へ解き放ち、天使の加護という名目で勇者という存在に救世主となってもらうことで団結力、経済力、技術力を成長をさせるのが目的なのだ。
「ひとまず人通りの多い所には出れた。まずは換金をしてマジックアカデミーという場所を探すとするか」
(あの城の近くだと何かと面倒なことになりかねない。この町ではアルバス・エドウィンと名乗るとして、問題は宿だな。っと、ここが換金所か)
今後の方針を考えていたアルバスは魔物の気配の多い店の近くまで歩いてた。外では窓口を開けて金品での売買をしているのが見える。しばらく観察していると、店の中へサイクロプスの巨大な目玉を持った筋骨隆々のいかにも戦士といった脳筋が魔法使いの一緒に入って行くのを見ることができた。
アルバスは二人組に続いて店に入る。店内は薄暗く、魔物の剥製、ドラゴンの牙や鱗、巨大蜘蛛の足などが飾られ、店の奥にある怪しい緑の光を放つ鍋はグツグツと何かを煮込んでいる。
「これはこれはエルード殿ではございませんか。今日はなにを持ってきてくださいましたか?」
「見りゃわかるだろ!こんなにでけぇ目ん玉ぁサイクロプスの目玉ぐれぇだろ。」
「ハッハッハッ!確かにそうでしたな。で、そちらの魔法使いのお嬢さんは?」
「こいつはサクっていうんだ。こんなちっさいのにすげーんだ!超でけぇサイクロプスの足を一瞬で凍らせちまったんだぜ!しかもよ。この目玉の表面にうっすい氷の膜を作ってさ。新鮮な状態で運べたんだよなーこれが。固定化魔法だったか?まあ、俺は魔法のことはからっきしだからわかんねぇな!ハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」
立ち飲みカウンターのような場所でエルードと呼ばれた戦士と店の男性らしき人物が話し合っていた。魔法使いの女性は近くにある椅子でコクリコクリとうたた寝に入っていた。しばらくして店の男性が戻ってくると一枚をエルードに差し出した。
「これだけのものを見たのは初めてですよ。なのでちょっと色を付けさせていただきました。」
「あー。俺はこの半分でいい。もう半分はサクに渡してやってくれ。」
「パーティを組んでいるのではないのですか?」
「まさか。適当に誘っただけだからな。それでも俺の知っている魔法使いの中では間違いなく最高だったさ。じゃあなおやじ。またいいもん手に入ったら来るぞ。」
返事を聞かず、サラを置いて出ていくのは戦士というより猪武者と言った方がいいかもしれない。店員はというとホクホク顔でサイクロプスの目玉を大きな袋に入れ、緑色に発光しながら沸騰している鍋に沈めては持ち上げ、沈めては持ち上げを繰り返している。
(うっわ・・・ひくわ・・・)
ごとっ
「おっと!お客さんがいたのか!これはすみません。なにせ珍しいものが手に入ったので気が付かなかったよ。」
アルバスが後ずさったときに足が樽にぶつかった拍子に思ったより大きな音が出てしまったのが功を奏したのか、店の人がこちらに気付いた。
「おや?おやおや?お兄さんは初めて見る顔だね。で、なにを持ってきてくれたんだい?」
店の人間は初めてみる客がどんなものを持ってきたのかを楽しみで仕方がない。アルバスはフードを被っているのに加え、店の中が薄暗いというのも相まって口元しか見えない状況になっているからだ。謎に包まれた人物がなにを出すのか、それだけで店の人間の興味を引き付けるには十分。
アルバスは懐から魔法で加工された皮の袋を取り出し、小さな液体の入った瓶を取り出した。
「ほほう・・・これはいったい・・・」
瓶の中の液体が気になる店員が栓を外そうと手をかけた瞬間
「開けちゃダメ!!!!」
突如、叫ぶようにサクと呼ばれていた女の子が杖を突き出し。瓶の栓と口の部分を氷漬けにしてしまった。
「お兄さん。それをどこで手に入れたの・・・答えて!」
魔法少女サクがこちらに向かって杖を突きたてる。アルバスはそうなってしまっては仕方がないといった感じで両手をあげて無抵抗のポーズをとった。
「お、お嬢さん。この液体がなにか知っているのなら教えてくださいよ。」
「その瓶に入っているのは黒の蝕み花の蜜よ。」
「ヒイイイイイイイイイイイイイ」
店員は崩れ落ちた。蝕み花というのは、一つ咲けば辺り一面を食らい尽くし魔力としてため込むと言われている危険な花である。魔法の触媒として重宝されることが多く、ここ魔法都市でさえも厳重な監視のもとに研究が行われている。花としても非常に美しく種子の段階から人工的に栽培された蝕みの花は、その最大の特徴である浸食と魔力変化がほとんど失われており白天の花という名称で人気がある。
尚アルバスの持ってきた黒の蝕み花の蜜は完全に野生の花から採取したものであり、正しく使うことができれば一滴で枯れた泉を復活させたという逸話があるほどのものなのだ。
「黒の蝕み花は見つけることも困難と言われているのよ。それをどこで・・・」
「場所を教えるだけなら簡単だ。廃墟の中心。かつで蝕み花によって滅んだ国の中心に咲いていた。きっと魔物の巣窟になっている。いったところで全滅だぞ。」
「それで、あなたはなんでこれを?」
「偶然にも迷い込んだ(魔界の)森でさ迷っていたら見つけたから、ちょっとだけ蜜を頂いた。それだけだ。草木にだって意思はある。こちらから手を出さなければ問題の場合がほとんどだ」
「そう。(森になった)廃墟の中心・・・」
サクは杖を下ろしてずっと座っていた椅子に掛け直す。
木製の椅子の軋む音は、どことなくサクの心を落ち着かせてくれた。
「ごめんなさい。」
「こっちも軽率だった。こんな危険なものは先に知らせておくべきだったな。噂に聞いた魔法都市なら、こういった危険物の扱いもできると思っていた。」
状況が落ち着き、店員がゆっくりと立ち上がる一枚の紹介状を差し出してきた。
「すみません。な、なにせこれほどものを扱うというのは誉れでございますが、私にはまだそれを扱うだけの技術を持ち合わせておりません。なのでマジックアカデミーの研究科へお持ちになってください。こちらの紹介状を渡せば納得してくれるでしょう。」
「・・・・・・・・・・・・・」
アルバスは紹介状と蜜の入った瓶を再び布の袋に入れて店を出て行る。それからしばらくあてもなく歩いていると
「待って。」
後ろから聞き覚えのある声に呼び止められる。
「たしか・・・サクだったか?どうしたんだ?」
「あなたここは初めてなんでしょ?案内する代わりに付いて行ってもいいかしら?」
こうして魔王様(若様)こと通称アルバス・エドウィンと魔法使いの少女サクというコンビが誕生した。
歴史に残ることのない瞬間であったが、きっとこの出会いは永遠とも思える有限の時を過ごす魔王にとって忘れることのできない一瞬であろう。
魔物図鑑 005 スライム
おそらく世界一有名な魔物。体のほぼ百パーセントが水分でおり物理耐性は極めて高い。ただし核の部分を切断、もしくは潰された場合は即死してしまうため、やっぱり最弱と言ってもいい。
人型のスライムは女性型が多く、種の繁殖としては男性の精を胎内に受け入れることで行われる。
家で飼う場合は綺麗な水の近くで住むようにしましょう。
基本的に雑食ですが、果物が好物であるという研究結果が出ている。