泡になるのは君じゃない
キミは永遠に泡になって消えたりしない。
泡になって消えるのはキミじゃない。
キミは俺と絶対に結ばれることのない運命。
最初からムリだとわかっていたのにキミも俺も本気だった。
本気で俺はキミを愛した。
キミも俺を本気で愛してくれた。
ただ互いが向かっている運命を交わそうとしてすれ違っていた。
バッドエンドをハッピーエンドに変えようと必死だった。
もしキミが恋焦がれたのが俺じゃなくて別の男だったら。
これが喜劇のワンシーンだったなら。
キミのたくさんの傷とキミを変えてしまった愛をすべて燃やしてしまえるのに。
この闇が晴れたら全部無かったことになるんだ。
この闇夜が去ったら何もかも無かったことになるから。
ゆっくりゆっくり目を覚ましてくれよ、俺の大切な恋人ひと。
キミが目覚めたとき、キミは俺を忘れているはずだから。
だけど覚えていてほしい。頭の片隅にでもそっと置いておいて欲しい。
俺の愛がキミを守るから。
俺の愛がずっとキミを守るから。
キミは綺麗だ。
言語という型にはまることのない輝きを放つ。
とても眩しくて言葉が出ないほどキミは綺麗だ。
俺はキミを忘れることはできないだろう。
キミが美しすぎたせいだ。
キミを俺が愛しすぎたせいだ。
吹き荒れる嵐。まるで空が崩れ落ちそうだ。
今の俺に少しは似合うんじゃないか。
あのまばゆい光の中で俺はキミを手放さなければならなかった。
それを俺はわかっていた。
その分もっと愛したことを俺は知っている。
俺の愛が覚えているから。忘れられるはずがないこの感情を。
キミが目覚めて俺を思い出して俺に会いたいといってくれるならすぐにでも駆けつけたい。
キミと俺の大きな妨げに無惨に倒れてもキミのためならそれさえも耐えられるよ。
キミが俺を呼ぶなら俺は駆けつける。
キミがどんな姿の俺でも良いというならば俺はすぐに駆けつける。
今の俺は息ができないくらい苦しい。身体中が痛い。
キミの笑顔が。
キミの輝く笑顔だけが鎮痛剤なんだ。
俺は最後の力を振り絞ってでもキミの笑顔を見に行くよ。
俺の我が儘が度を越してしまったようだ。
俺たちの話に終わりがあるならば。
俺たちの話がハッピーエンドであることを願うよ。
俺が目覚めて隣にキミがいない。
キミが目覚めて隣に俺がいない。
けれど、心配しないでくれ。苦しまないでくれ。もがかないでくれ。
今までの全てが崩れてしまうから。
キミに悲しみの涙を流して欲しくない。
次に会ったときは俺に熱い涙よりすごく冷たい笑みを見せてくれ。
どうか俺の心だけじゃなくて心臓も持っていってくれ。
俺がキミにとって眩しい人として残れるようにその刃物で俺を燃やしてくれ。
鋭い月の光。
静かに目を閉じた。
息の音さえない苦痛の中に流れる澄んだ光。
それはきっとキミだ。
キミの目の中にいっぱい込み上げる月明かり。
あぁ。この闇が晴れたら無かったことになるから。
あぁ。この闇夜が明けたらすべて無かったことになるんだから。
キミは永遠に泡になって消えたりしない。
泡になって消えるのはキミじゃない。
最後まで知らずにいなきゃいけなかった。
キミは何も知らないままでよかったのに。
朝の日の光が下りてくるよ。
まるでキミみたいに眩しく流れ落ちる。
キミによく似た光が下りてくる。
あぁ、俺は道に迷ったみたいだ。
人魚の涙という曲を参考にさせていただきました。