marriage
私が高校生三年生で、君が小学4年生だった頃のこと覚えてる?
家が近所で、よく顔を合わせる小学生だなって思ってたけど。
ある時、君が私の前でこう言ったよね。
「僕と結婚してください。」
って。
覚えてる?
自分のお小遣いで買ったらしい花を私に差し出して。
名前も知らないのに。
私たちは高校生と小学生。
最初はからかってるのかと思ってた。
だけど、毎日、君がお世辞にも上手とは言えない字でラブレターをくれるから。
この子は本気なのかなって思い始めてた。
でも、私はすぐに遠くの大学に進学して、君はいつの間にか中学生になってて。
たまに帰ってくる時に見かけた君はずいぶん大人っぽくなってた。
小学生から中学生になったんだもんね。
大きな変化だよね。
きっと、もう私のことなんて忘れてるんだろうな。
そう思ってたけど。
「僕のこと忘れてないよね。」
って。
私が帰る日に、前と同じように花を渡しに来てくれた。
ずいぶんと身長も伸びて、目線もそんなに変わらなくなってた。
君の真剣な眼差しに何だかどぎまぎして。
「もう。年上の人をからかうのもほどほどにしなよ。」
なんて笑いながら言ったけど。
あの時の君の悲しそうな目は今も忘れられない。
私は大学を卒業して社会人になった。
25歳を過ぎたあたりから、周りに早く結婚しなさいとせかされた。
まだまだ働きたいし、異性との付き合いもそこそこうまくやってた。
何気ない日々に突然、君が現れた。
「僕のこと忘れてないよね。」
一瞬、誰だかわからないくらい変わったね。
私よりも大きくなって、声変わりもした。
顔も体つきもあの時の小学生とは遠く離れた、男性。
「僕と結婚しよう。」
「でも・・・私、あなたのことよく知らないわ。」
「じゃあ、今から、この瞬間から僕を知っていけばいい。」
「もう一度言うよ。
僕と結婚しよう。」