10年前
"青の鼓動がきこえる
深海の奥深く
遥か遠い向こうから
海底から見上げる海面の
それがいかに眩いことか。"
震撼した
『碓水さん!新人賞受賞おめでとうございます』
『ありがとうございます』
そして同時に彼の言葉は世界を救うだろうと悟った
『17歳、現役高校生にして有名文学賞を受賞されることについて、多くの有名作家の方々からお祝いの言葉を頂いていますが!』
『恐縮です』
『今回受賞した作品「水海月の青」はご自身の実体験から来ているとお話を伺いましたが、それはどういった内容なのでしょうか』
『主人公の青年のことですね。この作品では海底から海面を見上げる描写が多々あるんですが、ぼくが実は泳げなくて、溺れたときに見た光景を言葉にして綴った感じです』
『最後になりますが、今後先生と呼び親しまれることに対するご気分はいかがですか?』
『先生なんてとんでもないと思っています…ぼくはただの冴えない高校生なので…
でも、ぼくの物語を読んで、多くの人が面白い…それ以外の感情を呼び覚ましてくれたなら、その瞬間ぼくにとっての成功と言えるでしょう』
稚拙ながらに 通ずる何かがあった
例外じゃなかった
こんなちっぽけな私でも
『では、次にサイン会へと移行致します。会場の皆様は係員の指示に従って一列にお並び下さい』
「碓水先生は今一度此方へ」
だめだ 行っちゃう
待って
せめて一言
一言だけ
「あ、あ、ぁああのっ!!」
遠巻きから悲鳴みたくあげた一声に彼は反応を示し
ゆっくりと振り向く。
「…あ」
何も言えなかった
海底から見る海面の如く
彼がまばゆ過ぎたから