二人の事
てんやわんやなったとその部屋を後に……できなかった。
司祭達の生き残りがいないかの確認とゴブリンが光に変わり消えてなくなるのを確認してから出ないと後で面倒になる
「それで晶……あ~、クリスティン?」
「好きな方で呼んで構わんよ。 晶の方が楽ならそれでよい」
「それじゃ晶。何でそんな格好してるん」
徹夜がこちらの格好を指差しで聞いてくる。
まぁ、この辺の事は説明しないといけないことだし
「私は二人と違って異世界召喚ではなく異世界転生でこの世界にやってきた、ということだ。ちなみに享年96歳、自分で言うのもなんだが大往生だったと思うぞ。」
「ただし独身だった、と」
和也の言葉を聴いて確認作業がぴたりと止まる。
この二人はその時いなかったはずなのだ。
なのに何故そのことを……!
「まぁ、隠す必要も無いから肯定するが、和也何故わかった?」
「勘だ」
「ぬぅ、お前の勘は本当に鋭いからな」
和也の勘はそれはもう当たる
お菓子のあたりを当てる所から危ない事を避ける事まで様々だった。
「異世界転生だったら死ぬまでかぁ。その時俺達って何してた?」
徹夜からの質問
これにはちょっと真面目に聞いてもらわないと困る
「二人とも、良く聞け」
「?」
何だ?と言う不思議そうな顔をした二人に私はこう告げた
「私が生きているうちに、お前達は元の世界に戻っては来なかった。死亡扱いになっていたのだよ」
その言葉に二人はお互いの顔を見て驚き、それを隠せないで居た
二人が消えて80年、幾度と無く死んだという明確な情報が無いまま生きて帰ってきて欲しいと願った私だったがそれだけは適わなかった。
もっとも、こうして異世界召喚された場面に出くわすと言うのは、因果な物だと思うがな
「つまり、俺達はここに永住したってことで良いのか?」
「さて、其処は判らん。 この世界と元の世界の時間の流れが一定である保障は何処にも無いからな」
「その証拠が晶、ということか」
「そうなるな」
和也の質問に答え、徹夜の質問に答える。
ただ、個人的に言うのであればこの二人が無事に生きていると言う事が何よりも嬉しいことだったりする。
あの世界で死亡扱いを信じなかった甲斐があったというものだ
「そっか~。俺達この世界に永住か。あ、俺達勇者だけどなんで司祭とか殺したん?別に殺さなくても良かったと思うんだけど」
「勇者には特権が幾つかあるがその中に「現国王を殺しても誰にも処罰されない権利」ってのがある。此処の司祭達はお金が足りないからもっとよこせって言ってた連中」
「成程、何も知らない勇者を誑かし王様を殺させようとした、ということか。所であのさっきの変なのが消えてなくなっているが」
「あれはゴブリンだよ。良くあるファンタジー物で出てくる奴。それがこの世界にもいるって事だ。」
「でもあの武器全然痛くなかったぞ?凄く恐かったけど」
「それも勇者だからだ。強靭な力、鋼の如き身体、あらゆる呪いを弾き返す精神力。それが勇者なんだよ……あのゴブリンの武器だってこん棒で普通殴られたら死ぬからな?」
それを聞いて二人はゾッとしたような顔をした。
いきなり呼ばれて盾にされた恐怖が今になって再び襲い掛かってきているのだろう。
だが、少々困った事に時間が無くなってしまっている。
増援部隊を相手取っているカラド兄とアイリ姉が苦戦している。
そんな相手、いないはずだったが……?
此処からでは状況が確認できないのでとにかく外に出ないといけない
「二人とも、詳しいこの世界の説明は後回し。敵が来ていてその増援部隊に私の姉と兄が手間取ってる」
「俺達も闘うのか?」
「戦いの基礎も力加減も判らない二人は後方待機、闘うのを見ていてくれれば良いよ」
「初陣だと思ったのに……それでちっちゃい子からきゃ~きゃ~言われて……♪」
「あぁ、そうそう。この世界の女性陣なのだが」
ほんの少し、ためを作ってにやりを笑みを浮かべながら
「私の腰程度の慎重が普通だから、お前さん達夢のロリコンハーレムが作れるぞ?」
「「なん……だと……?!」」
とまぁ、そんな事をしながら先ほど下りてきた階段を上り境界の外へと向かう事にした
勇者の特性だったりチート内容はこの騒動が終わってからじっくりと説明するつもりです