始まり始まり
異世界テンプレ、と言うのを知っているだろうか?
間違って死んで神様に合うとか
神様の間違いで他人と間違えて死ぬとか
何かを助けようとして死んでしまいとか
神様の娯楽的な意味合いで死んだ人を見繕ってとか
そういう風なテンプレ的な要素が絡みまぁ、神様に出会った。
とは言え、私の場合神様に会うまでの過程はテンプレではなかった。
普通に小・中・高のある種義務過程を追え大学を卒業し就職しそのまま老人になるまで生きて死んだ。
性欲が無かったわけではないがそれなりだった事もあり、あまり恋人を作ることもせず最後まで生き抜いて、最後は畳の上で死ねた。
父さんや母さんは既に死亡していたし弟は結婚をして子供も出来た。
その子供達もまた結婚して孫を見せてもらいながら甘やかしたりし、時に叱りつけながら働き続け、働くのが終わったら日がな一日をのんびりと過ごしていた。
時間は長く感じ、同時に短くも感じるようになった頃、自分の身体がいよいよ動かなくなってきた。
介護をして貰おうかと悩みながらのんびりとしているうちに、布団の中で死んだらしい。
目の前の神様がそういうのだからまぁ、そうなのだろう。
「少しは納得してくれたかな~?」
「私としては自分が死んだ、と言う事に納得できる人間は少ないと思うがその辺りはどうなのかね?」
「むむ。それは難しい質問。直ぐにわかったって人も居るし納得できない!って暴れる人も居るよ~?」
「だろうな。私も少々驚いている」
さて、神様の見た目なのだが自分の身長が170前後で相手がその半分程度。
見た目的に言えば神様は子供のようなものであった
「でも神様なのである。えっへん」
心の中も読めるようでこの様に考えていることを読み取られることもある。
さて、本題に入るとしよう
「それで、私はこれからどうなるのであろう?順当に行くなら天国か地獄、或いは輪廻転生の輪の中に入ることになるのかな?」
「あ、それなんだけどね。えっと……そのどっちでもなくなっちゃった♪」
てへ♪と笑顔で私にそういった神様。
はて、どっちでもなくなったと言うのはどういう事だろうか?
「幾つか理由は有るんだけどそれは神様的な意味合いが強いから単純に言うと地球に戻れなくなっちゃったんだよね」
ふむ。
「なんで、と聞かれる前に答えると「判らない」と返答させて貰うよ。ボク達にとってもこんな現象今までおきたことが無いんだから。」
神様にわからない事が一般人に判るわけがない。
が、死んだ後普通ならやはり私が地球人だから其処で輪廻転生している、ということなのだろうか?
「その通り。人間だけじゃない。植物や動物、昆虫、微生物に至るまでありとあらゆるものに転生する筈だったんだ。なのに、それを何処で綻びが生じたらしく君が弾かれてしまった。地球創生以来始めての事で僕を含めて神様は今てんてこ舞いなわけなんだよ」
初めてか。
それは良い意味でか、悪い意味でかによって私の立ち振る舞いが変わる訳なのだが
「ごめんね、正直”判らない”これが良い事なのか、悪いことなのか、それを判断する材料が少なすぎる。そもそも綻びが有るのならば君以外にも零れ落ちてこないと言うのが可笑しいんだよ。」
成程、穴が開いた、と言うイメージがピンと来るような言い方だ。
さて、それでは私はどうなると言うのだろうか?
「君の処遇? いや、この場合は対処か。そうだね、地球には帰れないし」
神様は小首をかしげどうしようと悩んでいる。
先ほどから神様神様言っているが私はこの神様を”認識することが出来ない”
目の前に居ることはわかる。
判るのだがそれを言葉にする事が出来ない。
「それは当然の事だよ?だって僕神様だもん。億を越える人々が想像した姿をしたのが僕。だから姿は一つではなくて全ての人の想像した姿であり、一つの姿でもある。だから人間の君には認識できないんだよ」
胸を張ってどうだ、凄いだろうと言っている。
凄い事は凄い。
駄菓子菓子
「認識出来ないのなら、何故私は神様と喋れているのでしょうかね」
「……あ、本当だ」
神様は漸くその事に気がついたらしい。
「そっか、君が綻びから毀れたんじゃなくて何かの要因で半分以上覚醒しちゃったのか。あぁ~うっかりしてた。その可能性も確かにあったけどまさかそんな事起きるなんて思っても見なかったよぉ~」
なんか、覚醒とか中二病よろしくそんな単語が出てきた。
詰る所、私は神様になりそこなった人間、と言う認識なのだろうか?
「それであってるよ。でもさっきも言った通り、何故か輪廻転生の和から外れてるから地球”には”帰れない。でもパラレルワールドにはいける。」
ほむ。
テンプレか
「そう、テンプレ。君たちはこういうのに慣れている筈が無いのに何故かそういう知識だけは持っているから不思議だよね。とりあえず君は半分とは言え神として覚醒しているから人間になったら超万能人間になるね」
おぉ、つまり楽して暮らせる訳だ
「大まかに言えばそうかな?何処の生まれになるかはわからないけどね。食べるに困ることは無いと思うよ」
「ちなみに何が出来て何が出来ないか、聞いても?」
「出来ないことは無い。言ったでしょう?神様として半分覚醒してるって。それこそ禁忌とされてる死者蘇生だの一撃で世界を破滅に導くだの何でも出来る。英雄にも魔王にも犯罪者にもたった一つを除いてなんにでもなれる」
おや、神様でもなれないものがあるのか
「逆かな?神様だからこそなれ無い物。それは「勇者」」
勇者かぁ。
神様が選ぶから出来ないのかな?
「違うよ。「勇者」って言うのは人間特有の特性なんだよ。神様が唯一手を出すことが出来ない素質。それが「勇者」」
成程。
判らないと言うことがわかった。
いや、とりあえず勇者にはなれないと言う事はわかった
「理解してもらって嬉しいよ。じゃ、そろそろお別れだね。」
「異世界転生かぁ、ちょっと楽しみ。」
「君の居た世界と余り変わらないようで全く違う世界の始まり始まり、だね」
さて、それでは物語の始まり始まり